研究課題/領域番号 |
24580390
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
西野 直樹 岡山大学, その他の研究科, 准教授 (50237715)
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キーワード | 飼料 / 乳酸菌 / サイレージ |
研究概要 |
前年度の実験において、実規模で調製された発酵TMRから、難培養性の乳酸菌を数種類分離することに成功した。それらの中に好気的変敗を抑えるホモ発酵型乳酸菌が認められたため、これをLAB-1と称してイタリアンライグラス(IR)およびトウモロコシホールクロップ(CS)への添加実験を行った。前年度はCSでのみ実験を行っており、同様の効果がIRでも見られるか、CSで変敗抑制効果が再現できるか等を本年度の課題とした。 岡山大学農学部および岡山県畜産研究所で栽培されたIRおよびCSを材料とし、MRS液体培地で培養したLAB-1を105および106 cfu/gレベルで添加してプラスチックパウチに詰込んだ。貯蔵期間は3ヶ月とし、開封直後および変敗試験(7日間)後の発酵生成物および細菌フローラを調査した。 IRサイレージでは、LAB-1の添加によって乳酸含量は2倍に増加し、pHは対照サイレージの4.69から4.15まで低下した。開封後7日目になると対照サイレージは変敗し、pHは6.07となった。LAB-1添加サイレージでは開封時の数値がおおよそ維持されており、好気的変敗は起こらなかった。対照サイレージにはL. sakei、Weissella confusa、Pediococcus pentosaceusが検出され、LAB-1を添加するとそのバンドがこれらに加わった。変敗したIRサイレージにはBacillus sp.のバンドが明瞭に出現したが、LAB-1を添加したサイレージにはこれらが見られなかった。 WCサイレージの酢酸含量はLAB-1の添加レベルを高めると低下し、105および106 cfu/g添加では対照サイレージより有意に低くなった。開封後7日目では、106 cfu/gでLAB-1を添加してもサイレージのpHは4.54まで上昇したが、対照サイレージは著しく変敗しており、pHは5.5付近となった。無添加のWCサイレージにはL. plantarumやL. brevisといった乳酸菌が認められた。LAB-1の添加レベルを高めるとL. brevisのバンドは不明瞭になり、代わってLAB-1のバンドが明確に見られるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的であったglycerol dehydrataseポジティブな乳酸菌ではないが、ホモ発酵型で好気的変敗を抑えうる興味深い乳酸菌を得ることができた。サイレージからの分離例およびサイレージへの添加事例はこれまでまったくなく、本年度の成果は非常に新規性が高い。実規模調製を行って変敗防止能を評価し、産業応用への可能性も探りたい。
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今後の研究の推進方策 |
IRサイレージではglycerol dehydrataseポジティブなホモ発酵型乳酸菌の添加も行ったが、それよりもLAB-1の方が変敗抑制効果が明確であった。そのため、最終年度はLAB-1だけを研究対象とし、新規な乳酸菌添加剤の開発および作用機序解明に注力する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ほぼ計画通りに使用したが、消耗品費として少額の残金が生じた。 消耗品費として使用する。
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