研究課題/領域番号 |
24580391
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
松本 由樹 香川大学, 農学部, 准教授 (90335844)
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研究分担者 |
山内 高円 香川大学, 農学部, 教授 (50111232)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 動物生命科学 / 動物生産科学 / 腸管上皮 / 吸収形態 / AP2-α / Gelsolin / 蛍光顕微鏡 / RT-PCR |
研究概要 |
近年、食用米に含まれるmicro RNA(MIR156a)の機能性解析がすすみ、哺乳動物では、栄養吸収を盛んに行う小腸での取り込み制御を通じて、生体機能内のコレステロール値を直接低下させる可能性が報告された。これらを鑑みると、観的な評価法を確立しなければ、本当の意味で良好な飼養環境(安全な畜産技術)の確立は無いと考える。特に、動物生産領域において、機能性付加を望むのであれば、信頼できる飼料の評価基準なるものが存在し、さらに、横断的に利用される必要がある。 そこで、申請者らは長年にわたり解析を行ってきた飼料や機能性を有した飼料添加物(木酢酸、シリカゲル、乳酸菌、粉末生姜、酵母等)の結果を精査を行い、増体効果と共に吸収上皮形態の観察、および、電子顕微鏡(SEM)標本を用いて腸管上皮形態を客観的数値化する技術の確立を目指した。 形態隆起が観察できた試料では、Gelsolin等(アクチン重合分子含む)の発現が観察された。増体効果に関連した腸管上皮形態の変化を観察できた標本では、細胞周期制御に関わるAP2α発現が基底部陰窩領域で活性化することを明らかだった (Histol. Histopathol.2011)。この事は、基底部陰窩領域における細胞増殖との相関を新たに解析する着想をもたらした。また、乳酸菌等の付与による効果は、腸管上皮形態の隆起部でカルシウム制御性のアクチン結合タンパクとして栄養分の取り込みに働くことが明らかとなり、アクチン重合分子発現が腸内ホメオスタシスを調整する事を明らかにした(投稿中)。これら一連の研究成果は、AP2αによるアクチン重合分子発現制御を介し、Solute carrier family等の脂質吸収にも影響が出る可能性が考えられた。今後、交感神経や迷走神経による神経機能との相関解析を通じた解析へと発展させる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
家禽の消化器は、既に優れた栄養分の消化・吸収能を有しているが、さらなる家禽生産の効率化に向けた選択肢は極端に少ない。本研究期間には、次の1)~5)の解明を通して貢献したい。 1)試験飼育期間の短縮を目指すために、増体変化を予測できる内因性分子マーカーとしてのGelsolin動態を検証し、家禽生産の現場で活用できるよう実用化に向けた解析を行う。(現在、投稿中) 2)吸収上皮形態を3次元的に解析し客観的評価法の確立とGelsolin発現の相関性を明らかにする。(現在、投稿準備中) 3)AP2αとGelsolinの相関は、レポーターアッセイなどで確認後、家禽生産における機能性飼料(酸性・塩基性成分)と腸管での吸収性評価に応用する。(現在、実施中) 4)栄養物質の取り込み量の増加(形態変化)には、細胞死の抑制機能(Gelsolinによる効果)が増強されると報告されているが、この分子メカニズムをGelsolinとEEA1発現、遺伝要因と環境要因との相関解析を検討する。(現在、リバイス中) 5)Gelsolinは、タンパクやカルシウムと複合体を形成し、血中や神経軸索内を移動できる。十二指腸での栄養吸収が促進された家禽では、延髄孤束核および迷走神経支配を受けることから、増体変化、卵殻や骨形成に伴い血中や脳(脳脊髄液中)のGelsolin量も上昇することを実践的な環境下で明らかにしたい。(実施済み、投稿準備中)
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今後の研究の推進方策 |
①Gelsolinの取り込み作用と脂質排出に関わるAP2αの連携作用 GelsolinとEEA1(初期の取り込みマーカー)結果は、内部まで入り込む小型の小胞が多数局在していた事から、本年は、両者の発現を比較することで、エンドサイトーシスされる小胞のサイズと増体効果を解明したい。Gelsolin遺伝子発現がAP2αにより制御されるかどうかを明らかにするために、クロマチン免疫沈降法(ChIP)を用いて直接的な作用の有無について実験を行う。可能であれば、Gelsolin発現を低下させたニワトリを用いてAP2αの機能性を特定する。 ②十二指腸における迷走神経支配とAP2α、Gelsolinの機能解析 Gelsolinはタンパクやカルシウムと複合体を形成し、血中や神経軸索内を移動する性質を持つ。十二指腸を支配する迷走神経は、中枢神経系と連絡する際に、内因性基質cyclic AMP依存性プロテインキナーゼならびにCa2+/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼを必要とし、シナプス前における構造の維持と神経伝達物質の放出調節には、Gelsolinが機能的であると考える。レクチン類(WGA, C型レクチン等)は、糖鎖を利用しシナプス輸送時に複合体を形成し、神経細胞膜affinityを調節する。十二指腸での栄養吸収が促進された家禽を用いて、延髄孤束核および迷走神経支配を受け、骨や卵殻形成に伴い血中や脳(脳脊髄液中)のGelsolin量の上昇を確認し、脳脊髄液中のGelsolin量を測定することも視野に入れる。本研究を通して、十二指腸における腸管吸収機能を活性化することによる全く新しい家禽の増体制御の誘導技術を確立したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
①十二指腸陰窩におけるAP2α発現上昇とケミカルセンサーとしての機能性の同定:これまでに申請者らが報告してきたアルコールや脂質性ビタミン等による核内受容体を介したTlx, RXR等 (Mol Cell Neurosci. 2010,)や、c-kit関連因子(PDGFR受容体等)への直接作用 (Mol Cell Neurosci. 2010, J. Biol.Chem. 2011)を鑑みると、直接もしくは間接的にGelsolin遺伝子の上流領域に作用し発現制御している可能性が考えられる。相関解析は、是非とも、レポーターアッセイ系を確立し解明したい。(40万円程度必要) ②腸管上皮と血中内Gelsolin量との相関性を定義し、飼料効率良否判定への応用研究:十二指腸で隆起部の体積、ケミカルセンサー機能、生体内Gelsolin発現に何らかの相関が確認できた場合には、試験飼育期間の短縮を目指す具体的な研究を行う。家禽生産の現場での実用化に向けた基礎研究を行う。(10万円以内で実施予定) ③Gelsolinの取り込み作用と脂質排出に関わるAP2αの連携作用:現在リバイス中の論文では、GelsolinとEEA1(初期の取り込みマーカー)結果では、内部まで入り込む小型の小胞が多数局在していた(未発表データ)。GelsolinとEEA1発現を比較することで、エンドサイトーシスされる小胞のサイズと増体効果を解明できる。(リバイス内容では、再検討が必要な為、おおむね10万円程度必要) ④十二指腸における迷走神経支配とAP2α、Gelsolinの機能解析:科学研究費の補助を受けて、血中Gelsolinの測定法を確立した(未発表データ)。本研究を通して、メタボローム解析を行い、十二指腸における腸管吸収機能を活性化することによる全く新しい家禽の増体制御の誘導技術へと発展させたい。(抗体代として20万円必要)
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