研究概要 |
本研究では,暖地型草地において環境負荷が少なく,かつ効率的な牧草生産を行うための技術を開発することを目標に,暖地型草地におけるマメ科牧草と共生関係にある根粒菌およびアーバスキュラー菌根菌(以下,菌根菌)の関係を明らかにし,根粒菌及び菌根菌を最大限利用できるような草地管理法等を確立するため,以下のような研究を行った。 西南暖地において栽培利用可能な暖地型マメ科牧草種と菌根菌との共生関係を明らかにするための基礎的知見を得るために,導入した暖地型マメ科牧草グリーンリーフデスモディウム(Gd),クリーピングビグナ(Cv),バーガンディビーン(Bb),バタフライピー(Bp),セントロ(Ce)およびアメリカンジョイントベッチ(Aj)の計6草種を実験圃場に播種し,生育および菌根菌の菌根形成状況の調査を行った。 地上部乾物重は,11月にAj,Ce,Bb,Bp,Cv,Gdの順に高い値となった。個体乾物重は地上部乾物重と同様の順に高い値を示した。根粒数および根粒乾物重はAjが他の草種より有意に高い値を示した。菌根形成率は10月および11月ともにBp,Bb,Ce,Aj,Cv,Gdの順に高い値を示した。回帰分析の結果,菌根形成率と根部乾物重との間に有意な正の相関関係が認められた。以上より,草種間で生育に差が認められ,菌根形成率については根部の生育と関係があることが示された。 菌根菌の接種(2種の菌根菌,菌根菌の有無)およびリン施用量(0,1,2,4 gP/m2)が暖地型マメ科牧草の初期生育に及ぼす影響を検討するため,CeおよびGdを用いたポット試験を行った。Gdにおいて,全乾物重と土壌可給態リン含量との間に有意な正の相関関係が認められ,リン施用が植物の初期生長を促進したことが示された。また,菌根形成率と根粒数との間に有意な負の相関関係が認められ,根粒数が多いものほど菌根形成率は低下した。
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