研究課題/領域番号 |
24580393
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
飛佐 学 宮崎大学, 農学部, 准教授 (30332844)
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キーワード | アーバスキュラー菌根菌 / 暖地型マメ科牧草 / 根粒菌 / 共生 |
研究概要 |
本研究では,暖地型草地において環境負荷が少なく,かつ効率的な牧草生産を行うための技術を開発することを目標に,暖地型草地におけるマメ科牧草と共生関係にある根粒菌およびアーバスキュラー菌根菌(以下,菌根菌)の関係を明らかにし,根粒菌及び菌根菌を最大限利用できるような草地管理法等を確立するため,以下のような研究を行った。 西南暖地において栽培利用可能な暖地型マメ科牧草種と菌根菌との共生関係を明らかにするための基礎的知見を得るために,導入した暖地型マメ科牧草アメリカンジョイントベッチ(Aj),センチュリオン(Ce),バタフライピー(Bp),サイラトロ(Si)およびバーガンディビーン(Bb)の計5草種を実験圃場に播種し,草丈,個体重,菌根および根粒形成,植物体リン含有量について調査した。7月から8月の少雨により,ほとんどの草種に生育停滞が認められた。個体重は,有意差は認められなかったが11月にはBb > Si > Ce,Aj > Bpの順で高かった。菌根形成率は,いずれの月にも有意差は認められなかった。根粒重は,11月にはAj > Si,Ce > Bp > Bbの順で高い傾向を示した。菌根形成率と植物体リン含有量の間には相関関係は認められなかった。本年度の結果では干ばつの影響が大きく草種間に生育の差は認められたが,菌根形成率については植物の生育やリン含有率との関係が認められなかった。 AM菌接種およびリン施用が暖地型イネ科牧草およびマメ科牧草の混播栽培における牧草の成長に及ぼす影響を明らかにするため,セタリア(St)およびグリーンリーフデスモディウム(Gd)を用いたポット栽培試験による検討を行った。乾物重におけるAM菌接種の効果は認められなかったが,植物体窒素およびリン含有量にAM菌接種の効果が認められ,リン施用はStの成長を促進し,特に混播時の成長を高める傾向にあった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
圃場試験においては新規導入暖地型マメ科牧草の特性,根粒形成および菌根形成状況を調査,検討することができ,計画通りに実施できたが,干ばつの影響があったため菌根形成と植物体の成長や植物体リン含有量の間に相関関係が認められなかったことから再検討を要する部分もある。 ポット試験においては,実施計画にあげていたSDH(succinate dehydrogenase)法を利用した染色によるエネルギー代謝活性菌糸,ALP(alkaline phosphatase)法を利用した染色によるリン酸代謝活性菌糸を顕微鏡観察する菌根形成率測定方法の確立が十分にできなかったが,イネ科牧草とマメ科牧草の混播による成長促進効果と菌根菌の効果(植物体リン含有量の増加効果)を認めることができ,全体としてはある程度実施できたため。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度および平成25年度の結果をもとに,暖地型マメ科牧草を用い,菌根菌の接種接種の有無と土壌リン含量レベルが暖地型マメ科牧草の生育と菌根形成並びに植物体中の窒素およびリン含量に及ぼす影響を検討する。また,暖地型イネ科牧草とマメ科牧草の混播栽培における混播の効果と菌根菌が及ぼす影響についても詳細な検討を行う。SDH法を利用した染色によるエネルギー代謝活性菌糸,ALP法を利用した染色によるリン酸代謝活性菌糸を顕微鏡観察する菌根形成率測定方法の確立も行い,刈取後の菌根形成の動態についても検討を行う予定である。 圃場試験においては,平成24年度および平成25年度に実施した暖地型マメ科牧草の結果を基に,数種マメ科牧草種の生育と刈取後の再生に及ぼす菌根菌の影響を検討するとともに刈取後の再生時における菌根形成の動態についても検討を行う予定である。また,その際根粒形成,菌根形成状況についても調査,検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度にSDH法を利用した染色によるエネルギー代謝活性菌糸,ALP法を利用した染色によるリン酸代謝活性菌糸を顕微鏡観察する菌根形成率測定方法の確立について,十分に実施できなかったため,また国際会議出席のために旅費の使用を予定していたが,別予算で出席したためである。 平成25年度に十分実施できなかったSDH法を利用した染色によるエネルギー代謝活性菌糸,ALP法を利用した染色によるリン酸代謝活性菌糸を顕微鏡観察する菌根形成率測定方法の確立をおこなうため,実験に必要な試薬や器具等の購入を行う。
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