研究課題/領域番号 |
24580393
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
飛佐 学 宮崎大学, 農学部, 准教授 (30332844)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アーバスキュラー菌根菌 / 暖地型マメ科牧草 / 根粒菌 / 共生 |
研究実績の概要 |
本研究では,暖地型草地において環境負荷が少なく,かつ効率的な牧草生産を行うための技術を開発することを目標に,暖地型草地におけるマメ科牧草と共生関係にある根粒菌およびアーバスキュラー菌根菌(以下,菌根菌)の関係を明らかにし,根粒菌および菌根菌を最大限利用できるような草地管理法等を確立するため,以下の様な研究を行った。 暖地型マメ科牧草サイラトロ(以下Si)を用いて,生育初期の土壌中の可給態リン酸含量と根粒形成が菌根形成に及ぼす影響を明らかにするためにポット試験を行った。植物体乾物重は菌根菌非接種が接種より,根粒菌非接種が接種より高く,菌根形成率は菌根菌接種が非接種より,根粒菌接種が非接種より高く,菌根形成率と根部乾物重,植物体乾物重,植物体窒素含有量,植物体窒素現存量および根粒数との間にそれぞれ有意な負の相関関係,菌根形成率と葉部乾物重と有意な正の相関関係が認められた。菌根形成率と根粒数の関係から菌根形成と根粒形成の間で競合が発生していた可能性が示唆された。Siは初期成長においてリン欠乏を防ぐために土壌中の可給態リン酸含有量に関わらず,菌根形成および根粒形成を行い,炭素源を菌根および根粒に供給するか,あるいは地上部の成長に利用することで,根部乾物重の増加量を抑制するが,菌根形成および根粒形成によって根の養分吸収を補うことが示唆された。 菌根菌接種条件下においてリン施用量が暖地型イネ科牧草およびマメ科牧草の混播栽培における牧草の成長に及ぼす影響を明らかにするため,セタリア(St)およびグリーンリーフデスモディウム(Gd)を用いたポット栽培試験による検討を行った。乾物重におけるリン施用量の効果は混播Stでのみ認められ,その効果は生育の進行に伴い低下し,植物体リン含有量および菌根形成率には効果が認められないことから,菌根菌の接種によりリン施用量の低減が可能と推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
菌根形成の活性を観察する手法については十分確立することができなかったが,これまでの結果を基に暖地型マメ科牧草(Si)を用い,菌根菌の接種の有無,根粒菌接種の有無,土壌リン含量のレベルが初期の生育と菌根形成に及ぼす影響,並びに植物体-根粒菌-菌根菌の関係について検討し,生育初期において,植物体-根粒菌-菌根菌の関係がある程度明らかになった。また,混播栽培(StとGd)において菌根菌の存在下ではリン施用量の低減効果が認められることも明らかにできた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究結果を基に,圃場試験において,数種暖地型マメ科牧草の生育と刈取後の再生に及ぼす菌根菌の影響を検討するとともに,菌根形成の動態についても検討を行う予定である。また,特定の草種を用いたポット試験により,刈取再生時の植物体-根粒菌-菌根菌の関係についても検討を行う予定である。 菌根形成の活性を観察する手法(エネルギー代謝活性菌糸,リン酸代謝活性菌糸等の染色)についても確立し,刈取再生時の菌糸の動態を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
菌根形成活性菌糸の観察手法の確立について,十分に実施できなかったため,また研究協力者への謝金等の支払を予定していたが,別予算で支出したためである。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度に十分に確立できなかった菌根形成活性菌糸の観察手法を確立するため,必要な試薬や器具等の購入を行う。平成24年度にマメ科牧草の種子を購入したが,その在庫が少なくなったため,新たにマメ科牧草の種子を購入する予定である。
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