本研究では,暖地型草地におけるマメ科牧草と共生関係にある根粒菌およびアーバスキュラー菌根菌(以下,AM菌)の関係を明らかにし,根粒菌及びAM菌を最大限利用できるような草地管理法等を確立するための基礎的知見を得るため,以下の様な研究を行った。 暖地型マメ科牧草の初期成長におけるAM菌接種およびリンの施用量の影響ならびに刈取り後の再成長と菌根活性との関係を明らかにする目的で2つの試験を行った。供試植物として暖地型マメ科牧草であるグリ-ンリ-フデスモディウムを用い,処理としては,試験1ではAM菌接種の有無(接種;+AM,非接種;-AM)および3段階のリン施用量(0,2.5および5 gP/m2)を設け,試験2ではAM菌接種処理(+AM,-AM),植物体を地際から3 cmの高さで刈取る刈取り処理の有無(刈取り;C,非刈取り;NC)を設けた。サンプル採取は試験1では計3回,試験2では計5回行った。 試験1ではAM菌接種による効果が認められ,菌根形成率は+AM>-AMを示し,植物体乾物重は1回目,2回目の調査では+AM<-AM,3回目の調査ではAM菌接種処理間での差はなくなった。リン施用量についての有意差は認められなかったが,菌根形成率はリン施用量の増加と共に上昇する傾向を示したことから,初期成長にはAM菌接種とリン施用量が関係し,菌根形成が初期成長に負の影響を与えることが考えられ,また,菌根形成による負の影響は地下部においてより大きいことが示された。 試験2では,植物体乾物重は刈取後3日目にかけて有意に減少し,15日目には0日目と同程度まで回復した。生存菌糸形成率はAM接種処理間および刈取り処理間の効果が認められ,C区では0日目から1日目にかけて低下し,その後徐々に回復していく傾向にあったことから,植物体乾物重は一端減少した後に増加に転じ,AM菌においては刈取り直後に活性が急速に失われることが示唆された。
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