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2013 年度 実施状況報告書

亜硝酸塩による豚肉製品のトランス脂肪酸生成:そのメカニズムと制御法の研究

研究課題

研究課題/領域番号 24580394
研究機関宮崎大学

研究代表者

河原 聡  宮崎大学, 農学部, 准教授 (30284821)

キーワードトランス脂肪酸 / 亜硝酸塩 / pH / 加熱 / 食肉加工 / 食肉衛生
研究概要

本年度は夾雑するさまざまな食肉成分の影響を除き、豚肉の塩漬行程におけるトランス脂肪酸(TFA)の生成条件をより詳細に検討するため、抽出脂肪を用いた単純な実験系により評価した。
豚ロース肉から抽出した豚肉脂肪にpHを1~7に調整した亜硝酸ナトリウム(NaNO2)水溶液を添加し、震盪しながら65~85℃にて30分間加熱した。加熱を終えた豚肉脂肪は直ちに流水で室温まで冷却し、常法により総脂質を抽出した。総脂質をけん化・メチル化、固相抽出カラムを用いたクリーンアップならびにTFAの予備分画を行った後、ガスクロマトグラフによりトランス脂肪酸の定量分析を行った。
豚肉脂肪中のTFAはNaNO2水溶液のpHに依存して変化した。すなわち、pHが5以下の条件下においてTFAが増加し、特にpHが3以下になると顕著に増加した。このことは,酸性条件下においてNaNO2から生成する亜硝酸ラジカルによる酸化反応により,シス形脂肪酸のトランス異性化が進行する可能性をし際するものであった。本年度の研究において検出されたTFAはパルミトエライジン酸(C16:1n-7t),エライジン酸(C18:1n-9t),リノレライジン酸(C18:2n-6t)の3種であった。このうち,C18:1n-9tとC18:2n-6tはNaNO2およびpHの影響により脂肪中の含量が増加し,豚肉脂質の総TFA含量に大きく影響を及ぼした。一方,C16:1n-7tについては,総TFA含量に及ぼす影響はさほど大きくなかったものの,加熱の影響のみで含量が増加することが示唆された。
以上の結果から,亜硝酸ラジカルによる酸化反応ならびに加熱によるトランス異性化反応の2つの反応がTFAの生成機構であると推測された。これらは,TFAに着目した食肉製品製造工程の管理点を定めるための根拠を与える,重要な知見である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初計画において目標としていた亜硝酸塩によるトランス脂肪酸の生成要因について概ね明らかとなり,食肉製品の製造工程における重要管理点が定まりつつある。今後,これまでに蓄積した知見の妥当性および再現性を確認するための追試験ならびに補完実験が必要であるが,研究の進捗状況としては順調であると判断している。

今後の研究の推進方策

本年度の検討結果から、トランス脂肪酸の生成には亜硝酸ナトリウムから低pH条件下で生成する亜硝酸ラジカルが関与していることが示唆された。今後は、電子スピン共鳴(ESR)等の機器分析により、この点について詳細に検討し、亜硝酸塩によるトランス脂肪酸の生成機構を明確にしたい。さらに、これまでに得られた知見に基づいて補完実験を実施し、トランス脂肪酸生成に着目した食肉製品の加工・製造工程における重要管理点を明確にして、本研究の当初計画を完遂する。
また,これまでの研究成果に関して論文を作成中であり,本論文を投稿・掲載し,研究成果を国内外に公開する。

次年度の研究費の使用計画

試薬および器具の年度内納品が間に合わず,残金が発生した。
昨年度に発注した試薬類は既に納品が完了しており,次年度使用額は直ちに使用する。

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公開日: 2015-05-28  

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