研究課題/領域番号 |
24580397
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
向井 孝夫 北里大学, 獣医学部, 教授 (20229917)
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キーワード | 乳酸菌 / ビフィズス菌 / プロバイオティクス / ムチン / 付着 |
研究概要 |
平成24年度においては、ムチン精製段階におけるCsCl密度勾配超遠心分離処理の有無が、Lactobacillus reuteriの付着性に影響を及ぼすことが示された。これまで多くの実験において、粗精製ムチンを用いて乳酸菌やビフィズス菌のムチンへの付着性を評価している報告が多くみられることから、これらの菌のムチンへの付着性を再評価する必要性が示された。また、推定付着因子であるEF-Tuのムチンへの付着性を評価した結果から、分泌シグナルを持たないEF-Tuが細胞外に分泌されていること及び硫酸化ムチン特異的に結合することを明らかにした。以上を踏まえ、平成25年度は、第一に、ビフィズス菌におけるムチンへの結合性を再評価すること、第二に、EF-Tuの細胞外への分泌機構の一端を明らかにすることを目的とした。 ビフィズス菌のムチンへの付着性は、その純度が大きな影響を及ぼした。この結果から、抽出段階で夾雑する脂質やタンパク質等の高分子生体成分に付着性を示す菌株とムチンに付着性を示す菌株が存在することが推察された。精製ムチンに強く付着する菌株を用いて、そのメカニズムを検討したところ、シアロ糖鎖や硫酸化糖鎖が結合エピトープであることが強く推察された。昨年度の結果より、Lactobacillusでシアロ糖鎖に結合する菌株は見いだされなかったことから、シアロ糖鎖に結合することはビフィズス菌の付着性の大きな特徴である可能性が推察された。次いで、EF-Tuの細胞外分泌経路を明らかにするため、ゲノム情報に基づきL. reuteri JCM1081を対象として Secに着目し解析した。SecのATPase阻害剤の添加によりEF-Tuの分泌量は著しく低下し、またsec欠損株ではEF-Tuの分泌は殆ど確認されなかった。したがって、EF-TuはSec輸送経路を介して細胞外へと移行していることが強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付時の平成25年度の目的では、1)EF-Tuの硫酸化ムチンへの付着領域を明らかにすることを実施すること 2)L. gasseriおよびL.reuteriが産生する翻訳伸長因子Ef-tuの細胞外への分泌機構を検討するため、ゲノム情報に基づき分泌に関わるターゲット遺伝子を決定し、欠損株を作製し分泌への寄与を評価することを目的とした。 1)に関しては、EF-Tuの分泌時期やムチンへの付着の最適条件を決定することはできたが、最終目標までは到達できず、目的の50%程度の進捗度である。その理由として、1年目の結果として、他の乳酸菌株やビフィズス菌株のムチンへの付着性を再評価する必要性が示されたため、これを優先し実験を進めたためである。2)に関しては、ほぼ予定通り、進捗している状況にあり、特に乳酸菌における新規タンパク質分泌機構の発見に繋がる可能性がある基礎的知見が得られている。以上のことから、総合的に達成度を判断すると、おおむね順調に進展しているものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度までに、乳酸菌やビフィズス菌のムチンへの付着性に、EF-Tuが大きな役割を果たしていることを明らかにできた。そこで平成26年度は、EF-Tuの分泌経路と分泌シグナルを明らかにすることを目的とする。また、分泌経路が明らかにできたのちには、本経路を介して分泌されるタンパク質をプロテオーム解析によって明らかにする。一方、硫酸化糖鎖に結合性を示す乳酸菌やビフィズス菌の腸内での役割を明らかにするため、類似の糖鎖に結合性を示す腸内病原性細菌や有害菌の排除効果を検討することを目的とする。
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