• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

ブタ、ニワトリの回腸粘膜細菌叢からのイムノバイオティクスの探索と利用

研究課題

研究課題/領域番号 24580401
研究種目

基盤研究(C)

研究機関独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構

研究代表者

田島 清  独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, その他部局等, 研究員 (80343953)

研究分担者 遠野 雅徳  独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, その他部局等, 研究員 (50547718)
大津 晴彦  独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, その他部局等, 研究員 (40455316)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード回腸粘膜付着細菌 / ブタ / ニワトリ
研究概要

生後12日、26日、49日、ならびに約180日(110Kg)のブタの回腸を採取し、粘膜に付着している細菌をMRSおよびGAM培地で単離し、菌を精製後16S rRNA遺伝子を用いて菌種の推定を行った。6週齢のニワトリ(チャンキー)から回腸を採取し、粘膜に付着している細菌を同様に単離、菌種の推定を行った。また、採取した回腸粘膜から総RNAを抽出し、RT-PCRにより16S rRNA遺伝子を増幅後、クローンライブラリーを作製した。1個体当たり48クローンをランダムに採取し、配列を解読して菌叢の推定を行った。
ブタ回腸粘膜から、MRS培養菌株を482株、嫌気性菌株115株を単離、解析した結果、Enterococcus, Lactobacillus, Pediococcus, Streptococcus, Weissellaの5属、21菌種類が確認され、L. agilis, L. johnsonii, L. reuteri, L. salivariusが15-22%の範囲で検出された。ニワトリではL. johnsonii, L. reuteriが主要菌として見出された。嫌気性菌ではStreptococcus属の菌種が全体の80%を占めた。
RT-PCRによるクローンライブラリーの解析では、離乳前の子ブタ回腸からClostridium disporicum、C. perfringensがそれぞれ15%、13%(解析数160、3頭)検出されたが、離乳後49日齢では、マウスやラットでIgA産生を刺激すると考えられているCandidatus Arthromitusが解析した個体(45頭)の60%から検出され、全解析数(1960)の25%を占め、最優勢であることが示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ブタ、ニワトリの生育ステージごとに回腸粘膜を採取し、MRS培地生育菌(乳酸生成菌)を482株、GAM培地による嫌気性菌を115株単離精製し、ライブラリーを作製、保存した。
また、同試料を用いてRT-PCRによる16S rRNA遺伝子ライブラリーを作製、配列を解析し、回腸粘膜に付着し宿主に対して活性を持つと考えられる菌叢を明らかにした。乳酸桿菌では、Lactobacillus agilis, L. johnsonii, L. reuteri, L. salivariusがイムノバイオティクスとして有力と考えられる。また、嫌気性菌では、マウスやラットの回腸に生息し、宿主の免疫賦活を行うと考えられるCandidatus Arthromitus(セグメント細菌)と相同性の高い配列(95%)が高頻度に存在することが明らかになった。
現在までにブタにセグメント細菌が存在することを示した論文は、電子顕微鏡を用いた1つだけであり、16S rRNA遺伝子レベルでは存在を確認できていなかった。本データはブタ回腸にもセグメント様細菌が存在する可能性を遺伝子レベルで明らかにした最初の知見であると考える。セグメント細菌は培養できないため、本菌をイムノバイオティクスとして用いることは難しいが、他の粘膜付着菌との相互関係や給与飼料条件等、セグメント細菌が増殖する要因を明らかにできれば、今までとは異なったイムノバイオティクスを提案出来る可能性があると考えられる。

今後の研究の推進方策

今年度は実験補助員の確保を十分できなかったため、予定していた金額を次年度に繰り越すことになった。次年度は補助員も確保できることから、効率的に実験を進めたい。
個体数を揃えるために引き続き成長段階でのブタ、ニワトリ回腸からの採材を継続する。飼料への応用を考えて、MRSで培養可能な菌株を中心に収集する。RT-PCRによる粘膜付着菌叢解析も継続する。
当初予定していた通り、宿主の回腸粘膜中で発現している免疫関連遺伝子の解析を実施する。特に昨年度見出されたセグメント様細菌(Candidatus Arthromitus)の存在の有無による、宿主の免疫応答の差異、この菌が存在している時の他の腸内細菌への影響等を詳細に解析する。また、本菌の存在が示唆されたブタの飼養条件等を調べ、伝播方法や増殖の条件等を考察する。
回腸の器官培養および免疫担当細胞と昨年度得られた回腸付着乳酸桿菌4種との共培養系により、候補菌株が宿主の免疫系に作用する機序を、免疫関連遺伝子発現、分泌型IgA抗体産生能を指標に調査し、イムノバイオティクスとしての菌株を絞り込む。

次年度の研究費の使用計画

菌種推定およびRT-PCRクローンライブラリー解析、免疫関連遺伝子発現解析などの遺伝子関連試薬と、器官培養・細胞培養系を実施するための費用を計上した。昨年度の繰り越し分を配分して、申請時よりも多目になっている。
昨年度は実験補助の人件費が少なかったが、今年度は予定通り支出する予定である。昨年度のデータの口頭および論文発表を予定している。
遺伝子関連関係試薬 780千円、細胞培養用試薬 700千円、消耗品類 320千円
人件費(実験補助) 500千円、論文投稿料等 70千円を予定。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)

  • [雑誌論文] Lactobacillus oryzae sp. nov., isolated from fermented rice grain (Oryza sativa L. subsp. japonica).2013

    • 著者名/発表者名
      Tohno M, Kitahara M, Irisawa T, Inoue H, Uegaki R, Ohkuma M, Tajima K.
    • 雑誌名

      Int J Syst Evol Microbiol.

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • DOI

      10.1099/ijs.0.048918-0

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Strain-dependent effects of inoculation of Lactobacillus plantarum subsp. plantarum on fermentation quality of paddy rice (Oryza sativa L. subsp. japonica) silage.2012

    • 著者名/発表者名
      Tohno M, Kobayashi H, Tajima K, Uegaki R.
    • 雑誌名

      FEMS Microbiol Lett.

      巻: 337(2) ページ: 112-119

    • DOI

      10.1111/1574-6968.12014.

    • 査読あり

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi