研究課題/領域番号 |
24580403
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
鈴木 裕之 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (50211313)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 卵子 / 成熟 / 細胞骨格 / 中間径線維 / ビメンチン / ネスチン / デスミン / 哺乳動物 |
研究概要 |
成熟過程における哺乳動物卵の細胞骨格(微小管,マイクロフィラメントおよび中間径線維)の動態について組織免疫化学法,免役蛍光染色法,またはウエスタン・ブロット法により観察し,主に蛍光顕微鏡と画像解析装置を利用した。 平成24年度はブタ卵を体外成熟培養して,あるいは各成熟ステージの生体内ハムスター卵を用いて,中間径線維,とくにビメンチン,ネスチンならびにデスミンの動態を追跡した。また,卵巣を組織免疫化学的に検討し,卵巣中の各組織における中間径線維の分布を観察した。卵子中に存在が確認された場合には,ウエスタン・ブロット法により各成熟ステージでの濃度変化を追跡した。 卵巣組織では,ビメンチン、ネスチンならびにデスミンは血管内皮細胞に共通して存在した。まず,ビメンチンは胞状卵胞に発育した卵胞の顆粒層細胞,特に基底部側と内腔側に染色性が認められた。しかし,卵母細胞はビメンチンの染色性を示さなかった。このことから,ビメンチンは卵子に直接というよりはむしろ卵胞発育に関与していることが示唆された。次に,ネスチンは内卵胞膜細胞と卵母細胞に局在していた。内卵胞膜細胞は内分泌であり,ネスチンとの関連性が,また卵子においてもネスチンが機能を持つことが示唆された。ウエスタン・ブロット法による検討により,GV期の卵母細胞で最もネスチン濃度が高く,卵が成熟するにつれネスチン濃度が低下した。最後に,デスミンは成熟した卵母細胞の表層に強染した。その他の卵胞組織には存在しなかった。したがって,卵母細胞の表層収縮と囲卵腔の形成に関与しているものと推察された。 この他に,次年度の予備実験として蛍光標識された二次抗体をハムスター卵内にマイクロインジェクションしたところ,卵子が破壊されることなく満足すべき蛍光強度が得られた。マイクロインジェクションの条件が確立できたと判断している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通りに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
哺乳動物卵における中間径線維,ビメンチンについては卵子内ではなく卵胞内での機能が推察されたので,ケラチンとの関連を含め検討したい。ネスチンについて卵胞膜細胞に局在するので内分泌の情報,特にゴナドトロピンとの関連が示唆される。未成熟卵巣と成熟卵巣とで比較する必要があると考える。また,デスミンについては囲卵腔の形成に関与していることが示唆されるので,収縮性のタンパク質であり,マイクロフィラメントのモータータンパク質であるミオシンとの相互作用を検討する必要がある。この際に,デスミン,またはミオシンの抗体をマイクロインジェクションすることによって,それぞれの機能阻害を誘発して,哺乳動物卵における中間径線維の生理的重要性を明らかにしたい。 さらに,それぞれの中間径線維の分布に関わるシグナル伝達経路を検討するために,MAPK,MPFあるいはRhoキナーゼの各種阻害剤と共培養することにより,それぞれの中間径線維の分布への影響を明らかにしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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