研究課題/領域番号 |
24580405
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
木村 直子 山形大学, 農学部, 教授 (70361277)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 卵母細胞 / 減数分裂 / 異数性 / 酸化ストレス / 老化 / 発生障害 / 卵成熟 / 培養系 |
研究概要 |
本研究では、抗酸化機能遺伝子を欠損させた3種のマウス卵(SOD1KO, xCTKO, ALRKO)をモデルに、卵成熟培養(IVM)系での紡錘体形態と染色体数の異常を解析し、減数分裂時の酸化ストレスによる染色体異数性発症の原因因子とそれらの発現や活性制御のカスケードの解明を目指す。さらに原因因子を制御する薬剤等の添加により、染色体異数性を防ぐ新規IVM法の開発を目指す。 これまでの研究から、20%酸素濃度下の卵成熟培養系SOD1KO卵では、1)紡錘体の矮小化、2)染色体異数性の増加、3)卵成熟時間の早期化がみつかっている。平成24年度は、上の1)~3)の主な原因因子を同定することを目指した。まず1)紡錘体の矮小化と2)染色体異数性の増加について、SOD1KOマウス卵で低酸素(5%O2)培養下や体内由来卵でもデータを採取し、比較検討を行った。その結果、SOD1KO卵の紡錘体の矮小化や染色体異数性は、低酸素(5%O2)培養系や体内環境では顕著に減少しており、明らかに高酸素培養系での酸化ストレスによるものであることが証明された。この原因因子についてスピンドルチェックポイント機能を担うBubR1に注目し、その発現動態を調べた。しかし、卵成熟過程での経時的な発現量に野生型卵との顕著な差はみられなかった。現在、BubR1のスピンドルチェックポイント機能異常の検証を継続するとともに、第一減数分裂中期で姉妹染色体早期分離が起こっているかについても検証を行っている。 また上の3)SOD1KO卵でみられる卵成熟時間の早期化の原因として、ホスファターゼPTENの発現や活性異常の可能性について検証した。卵成熟過程での経時的な発現量に野生型卵との顕著な差はみられなかった。一方で、PTENインヒビターの添加により、卵成熟は濃度依存的に早期化することも明らかとなったため、現在さらに検証を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請時の年度計画に沿って、着実に実施している。平成24年度は、卵成熟培養(IVM)系SOD1KO卵の酸化ストレスによる染色体異数性発症の原因因子とそれらの発現や活性制御のカスケードの解明を目指していたが、スピンドルチェックポイントタンパク質であるBubR1の発現解析を行い、発現量の異常はみられないことを明らかにできた。BubR1の発現局在の解析は現在実施中である。これまでの研究経緯から、酸化ストレスによる染色体異数性発症の原因因子については、多数の因子が関与しているものと予測され、平成25年度以降も検討が必要と考えている。 一方、研究結果から、高酸素培養系で染色体異数性がみられるSOD1KO卵では、第一減数分裂中期で姉妹染色体早期分離が起こっている可能性が考えられたため、今後は姉妹染色体の早期分離に関わる因子(Rec8など)についての発現解析を進める。 これまでのさまざまな研究結果を踏まえ、平成25年度以降に計画していた染色体異数性を防ぐ新規IVM法の検討についても、一部前倒しで実施している。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、染色体-動原体上で発現しているタンパク質の局在検出法の確立に時間を費やした。その結果、蛍光免疫染色により、動原体上のタンパク質の局在を確認できるようになり、これを利用した染色体早期分離の解析も可能になった。染色体異数性発症の原因因子については、多数の因子が関与しているものと予測され、平成25年度以降も、さらに他の微小管-動原体間の結合やスピンドルチェックポイントに関わる動原体タンパクの発現解析を進めていく。 並行して、卵内のミトコンドリア機能や抗酸化機能を上昇させるための薬剤処理による高発生の卵成熟培養系の構築を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度分の研究試薬や器具などの消耗品購入分の端数として、901円mの残金が出たが、これは平成25年度に実施する研究の物品費と研究成果を発表するための旅費に充てる。
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