研究実績の概要 |
本研究では、抗酸化機能遺伝子を欠損させた3種のマウス卵(SOD1KO, xCTKO, ALRKO)をモデルに、卵成熟培養(IVM)系での紡錘体と染色体の異常を解析し、減数分裂時の酸化ストレスによる染色体異数性発症の原因因子とそれらの制御カスケードを特定し、薬剤等の添加培養により、発生能力の高いまたは染色体異数性を防ぐ新規IVM法の開発を目指している。 平成25年までの研究から、異数性頻度の高いSOD1KO卵では、野生型と比較し、第一減数分裂中期の染色体動原体上のスピンドルチェックポイントタンパク質であるBubR1のシグナルが弱い傾向があり、BubR1の細胞質から動原体へのリクルートが、酸化ストレスにより阻害されていることを明らかにした。 そこで平成26年度は、BubR1の動原体へのリクルートを上流の制御していると考えられるMps1の動態解析を試みたが、反応性のよいMps1抗体の入手が困難で、上流カスケードの詳細は現在までに明らかにできていない。一方、アスコルビン酸(AA)あるいはアスコルビン2リン酸(AA2P)の添加によりSOD1KO卵の発生能がリバースすることから、これらはスーパーオキシドの消去に特異性が高いことを明らかにした。さらにAAあるいはAA2Pを添加したIVM培地でSOD1KO卵を培養した場合、動原体上のBubR1シグナルが、添加区で野生型卵と同様のレベルまで回復することを明らかにした。これらから、スーパーオキシドの消去あるいは酸化ストレスの軽減化は、BubR1の動原体上へのリクルートを促進するものと考えられた。異数性の解析については、現在、継続中である。 以上、本研究から、動原体上のBubR1のシグナル強度は、卵の異数性と相関しており、このシグナル強度を利用して、異数性を減らすためのIVM培地の添加薬剤のスクリーニングが可能であることが考えられた。
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