研究課題
TTN、EEF1A2、TSG101、ND1およびND4の多型についての相関解析の結果、DLOOP/288と100kg到達時予測日齢母系統効果との間で有意な関連が認められた。さらにND1、ND4およびDLOOP領域のタイピング結果から5つのハプロタイプが判定され、DLOOP/288のGアリルを有するハプロタイプ4は他のハプロタイプより高い母系統効果を示していた。また、育種価と母系統効果のデータを有する種豚が由来する母系12系統の全てを表す12頭のDLOOP領域全域で検出した多型についてのタイピング結果を用いた相関解析の結果、DLOOP/288、575、846と増体形質との間で有意な関連が認められ、これらのSNPはハプロタイプ4を特異的に規定していた。とりわけ、DLOOP/846のGアリルはヒトのDLOOP領域で転写制御に重要な役割を果たしていると報告されている150bpの領域と最も近傍の位置にあったことから、DLOOP領域/846のGアリルがランドレース種内での増体形質に影響を与えている可能性が高く、増体関連マーカーの最有力候補となることが示唆された。母系13系統の全てを表す13頭についての分子系統解析の結果、ハプロタイプ4、5から構成されるクラスターはその他のハプロタイプ(1,2,3)から構成されるクラスターと遠縁の関係であり、ハプロタイプ4、5から構成されるクラスターとその他のハプロタイプから構成されるクラスターはそれぞれのクラスター内でハプロタイプが分岐するより以前に分岐したと考えられた。ハプロタイプ4を規定するDLOOP/846 SNPのGアリルはハプロタイプ4と5が分岐した時点で生じた新規な変異である可能性が示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
100kg到達時予測日齢に関する育種価および母系統の効果を算出した後、核ゲノム上の遺伝子であるTTN、EEF1A2およびTSG101の多型については、100kg到達時予測日齢育種価に対する遺伝子型の効果について、ミトコンドリアゲノム上の遺伝子であるND1およびND4の並びにそれらの転写制御に関わるDLOOPの多型については、100kg到達時予測日齢母系統効果に対する多型アリルおよびハプロタイプの効果について相関解析を行うという当初の計画を達成した。この当初の計画に加えて、育種価および母系統の効果のデータを有する種豚が由来する母系12系統の全てを表す12頭のDLOOP領域全域のダイレクトシーケンスを行い、網羅的に多型を検出し、検出した多型についてのタイピング結果を用いて増体形質に対する多型アリルの効果について相関解析を行うという研究成果も得られた。さらに、全ての種豚が由来する母系13系統の全てを表す13頭でのミトコンドリアハプロタイプの遺伝的類縁関係の比較・検討のために、DLOOP領域のハプロタイプを用いて分子系統解析を行うという研究成果も得られた。こうして、当初の計画以上に研究が進展している。また、増体形質原因遺伝子の新規な位置的機能的候補と選定されたATP5C1、HADHA、COQ3、MYH7、ATP5BおよびMYH1について、DNA多型を検出すること、および検出されたDNA多型のタイピング法を確立することを行うことができた。
ランドレース種集団のゲノムDNAを鋳型に用いることで、ATP5C1、HADHA、COQ3、MYH7、ATP5BおよびMYH1の多型についてタイピングを行う。さらに、多型の遺伝子型を母数効果として取り入れた統計モデルを採用し、SAS GLMプロシジャを用いた相関解析により、増体能力(増体形質に関する育種価)に対して有意な効果をもつDNA多型を明らかにする。また、多型の遺伝子型の母数効果に加えて父畜さらには母畜を変量効果とした取り入れた統計モデルを採用し、SAS MIXEDプロシジャにより解析を行う。有意な効果をもつDNA多型が得られた場合、そのDNA多型と本年度の解析で明らかにされたDLOOP/846 SNPあるいはミトコンドリアハプロタイプを同時に取り込んだ相関解析を行う。また、上記のランドレース種集団を用いて、これらのDNA多型のアリルタイプ・遺伝子型・ハプロタイプ、それらの間の相互作用に加え、性、と殺日などの効果を母数効果として、個体自身の直接効果に関する育種価に加えて、母性効果(母畜の母性効果に関する育種価と永続的環境効果)を変量効果として、場合によっては、と殺時体重あるいはと殺時日齢を共変量として取り入れた混合モデルを設定し、増体形質に関する測定値に対して有意でない効果を除いていくということを繰り返し、最適なモデルを得ていくこととする。さらに、位置的機能的候補遺伝子のタンパク質レベルの発現量の差を解析するためのウエスタンブロット解析を行う。
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