研究実績の概要 |
異種移植には超急性移植拒絶を招く特定の糖鎖α-Gal epitope(α-Gal)をブタ細胞表面から除く必要があるが、更に、急性・慢性移植拒絶を抑える幾つかの移植拒絶抑制因子を導入された、いわゆる「多遺伝子導入クローンブタ」の開発が求められる。今回、独自に考案した選択用薬剤に依存しないpiggyBac(PB)を基本とした多遺伝子導入細胞の取得法、新しい方法を用いたα-Galを完全に発現しないKOブタ細胞の作製、体細胞核移植法(SCNT)などを用いて上記目標を達成することを目指す。α-Galはα-GalTにより合成される。従って、α-Galをブタ細胞から無くすには、α-GalT遺伝子をKOするか、α-Galを消化するEndoGalCを細胞内で発現させればよい。前者は、最近開発された次世代型KO系と呼ばれるCRISPR/Cas9を用いてα-GalT遺伝子をKOしたα-Galを完全に無くしたブタ細胞株CRISPR-2-1の作製に成功した(Sato et al., 2014)。後者では、毒素結合α-Gal特異的レクチンを用いて薬剤不在下EndoGalCを導入されたブタ細胞株(α-Gal陰性)を得た(Sato et al., 2013)。更に、PBを基本とした遺伝子導入系により、α-Gal発現陰性ブタ細胞を効率良く取得できることを示した(Sato et al., 2015)。従って、in vitroでブタ細胞への異種移植に伴う様々な拒絶を抑える因子(遺伝子)を導入する系は確立したといえる。一方、上述のCRISPR-2-1をドナーとするSCNTを用いて得たクローン胚盤胞にα-Gal発現が不在なことを確認した(Sato et al., 2014)。現在、最終的に多遺伝子発現クローンブタ作製を目指し、CRISPR-2-1にDAFやTMなどの拒絶を抑える因子をPB経由で導入している。
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