研究課題/領域番号 |
24580414
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
中島 一喜 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所家畜生理栄養研究領域, 主任研究員 (70370583)
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キーワード | ニワトリ / タンパク質分解 / FBXO22 / アトロジン-1 / 骨格筋 |
研究概要 |
培養筋肉細胞を用い、骨格筋におけるFBXO22の遺伝子発現をアトロジン-1遺伝子発現と比較し、生理的制御について検討することを目的とした。まず、培養筋肉細胞を血清を含まない培地(血清飢餓)で培養する区、その後、血清を含む培地で培養する区ならびに血清を含むアミノ酸無添加培地で培養する区を設け、FBXO22およびアトロジン-1遺伝子発現と比較した。その結果、FBXO22の遺伝子発現は血清ならびにアミノ酸の有無の培養条件では影響が見られなかったが、アトロジン-1遺伝子発現は、血清飢餓で増加し、血清を含む培地に交換し培養すると減少した。しかしながら、アミノ酸の影響はみられなかった。 次に、骨格筋に対してタンパク分解抑制作用を有するインスリン様成長因子-I(IGF-I)ならびにタンパク質分解促進作用有する合成グルココルチコイドのデキサメタゾン(Dex)を用いて、培養筋肉細胞のFBXO22およびアトロジン-1の遺伝子の発現量を調べた。その結果、培養筋肉細胞において、IGF-Iにより、FBXO22遺伝子発現には影響はみられなかったが、アトロジン-1遺伝子発現は有意に減少した。一方、Dexにより、FBXO22遺伝子発現を有意に減少し、アトロジン-1遺伝子発現は有意に増加した。 最後に、培養筋肉細胞において、タンパク質分解促進作用が有するのFBXO22およびアトロジン-1の遺伝子発現に対する影響を調べた。その結果、FBXO22遺伝子発現は、甲状腺ホルモンの影響はみられなかった。また、アトロジン-1遺伝子発現も、甲状腺ホルモンの影響はみられなかった。 以上の結果から、FBXO22およびアトロジン-1遺伝子は、培養筋肉細胞において、生理学的制御制御機構が異なる可能性が示唆された。また、両遺伝子ともグルココルチコイドで発現調節されているが、調節機構が異なる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養筋肉細胞を用いて、骨格筋におけるFBXO22の遺伝子発現をアトロジン-1遺伝子発現と比較し、生理学的制御について検討することを目的とし、培養筋肉細胞を血清飢餓で培養し、その後、血清を含む培地で培養し、FBXO22遺伝子発現には血清の影響は見られなかったが、アトロジン-1遺伝子発現は血清飢餓で増加し、血清を含む培地で再び培養すると減少することが明らかになった。 IGF-IならびにDexを用いて、培養筋肉細胞のFBXO22およびアトロジン-1の遺伝子発現に対する影響を調べ、培養筋肉細胞において、IGF-Iは、FBXO22遺伝子発現には影響を及ぼさないが、アトロジン-1遺伝子発現は抑制すること、Dexは、FBXO22遺伝子発現を抑制し、アトロジン-1遺伝子発現は増加させることを明らかにした。 培養筋肉細胞において、甲状腺ホルモンのFBXO22およびアトロジン-1の遺伝子発現に対する影響を調べ、その結果、FBXO22およびアトロジン-1の遺伝子発現には甲状腺ホルモンは影響しないことを明らかにした。 以上の結果から。FBXO22およびアトロジン-1の遺伝子は、同じF-Boxタンパク質であるが、培養筋肉細胞において生理学的制御機構が異なる可能性が示唆され、また、両遺伝子ともグルココルチコイドで調節されているが、制御機構が異なる可能性が考えられたことから、研究目的を概ね順調に達成していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
siRNAによるRNA干渉技術を用いたFBXO22遺伝子発現調節機構の検討 培養筋肉細胞を用いて、グルココルチコイドはFBXO22の遺伝子発現を抑制し、一方、アトロジン-1遺伝子発現を増加させることを明らかにした。これらの結果から、グルココルチコイドはこれらの遺伝子の発現を制御していることが示唆された。そこで、グルココルチコイドは核内受容体を介して、様々な遺伝子の発現を調節していることから、RNA干渉技術を用いてグルココルチコイド受容体をノックダウンし、FBXO22ならびにアトロジン-1の遺伝子発現への影響を調べる。 1) FBXO22ならびにアトロジン-1の遺伝子発現を調節に関与していると考えられるグルココルチコイド受容体のsiRNAを設計し、siRNAならびに導入試薬の組み合わせ、培養筋肉細胞に導入する。グルココルチコイド受容体遺伝子の発現がノックダウンしているかどうかをリアルタイムPCR法にて確認する。 2) 1)の実験で検討し得られたsiRNA導入条件で、グルココルチコイドで処理を行い、FBXO22ならびにアトロジン-1の遺伝子発現について検討する。その結果、グルココルチコイド受容体の遺伝子発現を抑制した条件下で、グルココルチコイドによるFBXO22遺伝子発現への影響がキャンセルされれば、グルココルチコイド受容体が関与する調節機構がFBXO22の遺伝子発現に必須であること、ならびにグルココルチコイドがFBXO22の遺伝子発現を制御していることが明らかになる。
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次年度の研究費の使用計画 |
効率的に予算を執行したために、本年度は10万円節約できた。 次年度使用額の10万円は、次年度の予算と合算し物品費として使用予定である。
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