研究課題/領域番号 |
24580416
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
佐藤 正寛 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所家畜育種繁殖研究領域, 上席研究員 (70370658)
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研究分担者 |
西尾 元秀 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所家畜育種繁殖研究領域, 研究員 (10585970)
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キーワード | 制限付きBLUP法 / 遺伝的改良量 / 近交係数 |
研究概要 |
24年度に作成した選抜と交配を繰り返すモンテカルロ法によるコンピュータシミュレーションプログラムを用いて、制限付き選抜における選抜反応を比較した。なお、制限付きBLUP法による選抜部分は、24年度に開発した制限付き選抜法のプログラムをサブルーチン副プログラムとして組み込んだ。 シミュレーションにより、世代重複のない雄10雌100の大きさが一定の集団を相加的無限集団モデルによって発生させ、10世代にわたり選抜を繰り返した。各世代、雄1頭が10頭の雌と無作為に交配した。離乳頭数は10 ± 2.85頭とし、雌雄世代あたり各200頭を育成した。育成時に2形質(T1およびT2)の記録が得られるものとした。選抜目標は、T2の大きさを変化させず、T1の大きさを最大にするものとした。主として異なる3種類の選抜方法(すべての個体に制限を付加した制限付きBLUP法: AR-BLUP、選抜候補個体にのみ制限を付加した制限付きBLUP法: PR-BLUP、無作為)を用いた。 2形質の遺伝率の大きさは、0.1、0.3および0.5のすべての組み合わせとした。形質間の遺伝相関および環境相関はそれぞれ3通り(-0.7, 0, 0.7)とした。母数効果として、性および世代の効果を発生させた。選抜法ごとに、遺伝率、遺伝相関、環境相関のすべての組み合わせにおいて、2,000反復のシミュレーションを行った。 本研究の結果、PR-BLUPはAR-BLUPに比べ、制限を付加しない形質に対し大きな遺伝的改良量を与え、制限を付加する形質の改良量を0に保つことが明らかとなった。AR-BLUPおよびPR-BLUPによる近交係数は、PR-BLUPのほうがAR-BLUPよりも小さくなる傾向にあった。以上のことから、PR-BLUP法は、AR-BLUPに比べ、望ましい選抜結果の得られることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
わが国における純粋種の種豚や鶏を育種改良する方法として、あらかじめ改良したい複数形質の育種目標値を設定し、現在の集団平均と目標値との差をバランス良く選抜していく制限付き選抜法が広く用いられており、その中から最も望ましい選抜法を提案するとともに、その汎用プログラムを開発する。前年度までに、①制限付きBLUP法における改良量の予測理論等を検証するためのモンテカルロ法によるコンピュータシミュレーションプログラムを作成するとともに、②選抜候補個体の中から次世代の種畜を選抜するための制限付き選抜法のプログラムを作成した。 本年度は、両者のプログラムを組み合わせて実行することにより、制限付きBLUP法における改良量の予測理論等の検証を行った結果、選抜候補にのみ制限を付加した制限付きBLUP法(PR-BLUP)は、すべての個体に制限を付加した制限付きBLUP法(AR-BLUP)よりも高い選抜反応が得られるとともに、近交度を抑制できることが明らかとなった。これらの結果は、選抜形質の遺伝的パラメーターを変えた場合や、異なる改良目標を設定した場合でも類似した傾向を示したことから、PR-BLUP法はAR-BLUP法よりも優れていることが明らかとなった。 以上のように、現在までの研究の達成度は、当初の計画通り順調である。今後、制限付き選抜法として、制限付きBLUP法を広く普及するため、当初の予定通り、制限付きBLUP法の汎用プログラムの開発に着手する。
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今後の研究の推進方策 |
制限付き選抜法における基本となるサブルーチン副プログラムを作成する。この副プログラムを活用するため、豚の育種改良の現場において容易に利用できる汎用性の高い主プログラムを開発する。 汎用性を付加するためには、選抜候補個体にのみ制限を付加した制限付きBLUP法において、①推定可能な母数効果の条件、②混合モデル方程式の左辺を正則行列にするための条件を明らかにする必要がある。また、混合線形モデルを組み立てる場合、①年次や季節等の母数効果および測定時体重等の共変量、②母性遺伝効果(変量効果)および母性共通環境効果等の変量効果をユーザーが自由に選択できるようにする必要がある。さらに、開発する制限付き選抜法プログラムは、原種豚の育種改良の現場でも容易に利用できるようなものとするため、パソコンレベルでも実行可能なものを構築する。 汎用性のある制限付き選抜法のプログラムの利便性は、実際にユーザーが使用してみないとわからないこともあるため、プログラムの提供後も逐次バージョンアップができるよう、簡潔なプログラミングを行う必要がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度は、データの取りまとめが予定よりも早く順調に推移・終了したことやソフトウェアの独自開発などから、主に人件費と物品費で繰越金額が発生した。また、本年度はコンピュータシミュレーションによる膨大な結果を処理するとともに、それをまとめるためのルーチンワークのため人件費が必要と考えていたが、結果の処理をコンピュータ化することにより、人件費を削減することができた。 次年度は、当該分野における多くの研究者との情報交換および研究成果の発信が必要不可欠である。特に、本研究の中核となる制限付き選抜法に関する研究には、国内外に多くの研究者が携わっている。そのため、本年度の繰越金となった研究費は、次年度の研究費と併せて、結果の取りまとめのための人件費および研究代表者および分担者の国際研究集会における発表や研究打ち合わせのための旅費に用いる予定である。
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