背脂肪の厚い梅山豚と薄いランドレースの2品種間でmRNA発現量差の見られたアディポネクチンにアミノ酸置換を伴う多型が存在したことから、アディポネクチンタンパク質の多量体形成様式が変化し、その作用機能に影響を及ぼす可能性が想定された。 本研究では、アディポネクチンの多量体を検出する系を確立し、梅山豚とランドレースのアディポネクチンをタンパク質レベルで比較することとした。そのためには多様な多量体構造を取ると言われるアディポネクチンに応答する抗ブタ抗体が必要不可欠であったが、アミノ酸配列の相同性が8割程度では市販の抗ヒト及び抗マウス抗体によりブタアディポネクチンを特異的に検出することはできなかった。この結果、新規にブタアディポネクチンモノクローナル抗体を作出することを試みる一方で、抗体がなくても検出できるよう梅山豚型及びランドレース型アディポネクチンcDNAをpCMV-DYKDDDDKベクターに組み込み、HEK293及びブタ脂肪前駆細胞株(PSPA)にてタグ標識アディポネクチンの強制発現を行った。細胞画分と培養上清画分中のアディポネクチンタンパク質をウェスタンブロットにより抗タグ抗体を用いて検出したものの、そのバンド様式及び強度に両品種間で特段の違いは見られなかった。 モノクローナル抗体作製のため抗原4種類をBALB/cマウスに免疫した結果、ブタアディポネクチンN末側variable領域の17aaを抗原とした抗体を産生するハイブリドーマのクローン化に成功した。得られた抗体がκ軽鎖のIgM抗体であることを確認した。この抗体を用いて梅山豚及びランドレースの血清を用いてウェスタンブロットを行った結果、両品種間で背脂肪厚に差が生じる3~5ヶ月齢頃からランドレースの方でアディポネクチンタンパク質量が多くなること、また300kDa以上の超高分子多量体の存在が一部の個体で観察された。
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