研究課題/領域番号 |
24580418
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
中牟田 信明 岩手大学, 農学部, 准教授 (00305822)
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研究分担者 |
保田 昌宏 宮崎大学, 農学部, 准教授 (10336290)
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キーワード | 鋤鼻器 / 肛門腺 |
研究概要 |
フェロモンは同種他個体に作用し、生理的変化や特定の行動を引き起こす物質であるが、その分子的実体やフェロモンの受容機構については良く分かっていない。本研究は、神経細胞の活性化によって発現が誘導されるc-Fos タンパクと、フェロモンを受容する鋤鼻受容体遺伝子の転写産物との二重染色により、キノボリトカゲの肛門腺に含まれるフェロモンの受容体を同定し、爬虫類フェロモンの実体と鋤鼻系を介した情報伝達機構の解明につなげることを目的としている。 平成25年度はキノボリトカゲの生体を用いて、オスとメスを1匹ずつ、あるいはオス同士、メス同士の組み合わせでケージに入れる行動観察実験を行った。キノボリトカゲは実験に使用するまでの間、1個体ずつ分けて小ケージ(縦15センチメートル×横20センチメートル×高さ15センチメートル)に入れておいた。観察用ケージには縦20センチメートル×横35センチメートル×高さ30センチメートルの透明プラスチックケースを、実験が終了する度にエタノールを浸み込ませた脱脂綿で拭いて使用した。使い捨てポリエチレン手袋をはめてキノボリトカゲを観察用ケージに移し、体色の変化や行動を約10分間記録した。 一連の行動観察実験が終了した個体は、麻酔の後、パラホルムアルデヒドを潅流して固定し、免疫組織化学ならびにin situハイブリダイゼーション用試料とした。また、一部の個体からはRNAとDNAを採取し、RT-PCRならびにPCR用試料とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
オキナワキノボリトカゲにおけるフェロモン受容器と考えられる鋤鼻器を電子顕微鏡によって観察し、明らかになった細胞の微細形態学的特徴を、第156回日本獣医学会学術集会において発表した。 さらに、季節繁殖動物であるオキナワキノボリトカゲにおける肛門腺フェロモンの産生にとって、特に重要と思われる精巣の機能を評価するため、指標となる細胞骨格タンパクの局在を免疫組織化学的手法によって明らかにし、第19回日本野生動物医学会において発表した。これらの研究成果については、学術雑誌へ投稿準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
クローニングに成功し、鋤鼻器における発現が確認できた全ての鋤鼻受容体遺伝子についてin situハイブリダイゼーションとc-Fosタンパクの二重染色を行い、キノボリトカゲの肛門腺に含まれるフェロモンが、どの鋤鼻受容体を発現した細胞で受容されているか を絞り込む。 肛門腺フェロモンの受容に関わる鋤鼻受容体遺伝子を発現した細胞ならば、フェロモンを含んだ肛門腺抽出液で刺激した時にのみ活性化してc-Fos 陽性となり、フェロモンを含まない抽出液の時はc-Fos 陰性のはずである。 フェロモン特異的な鋤鼻受容体遺伝子が絞り込めたら、その遺伝子産物に対する抗体を作製し、免疫組織化学によって鋤鼻器における受容体発現細胞の分布や、その細胞が軸索を副嗅球のどこに投射しているかを調べる。
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