研究課題/領域番号 |
24580420
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
板垣 匡 岩手大学, 農学部, 教授 (80203074)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 単為生殖型肝蛭 / トリクラベンダゾール / 虫卵孵化 |
研究概要 |
H24年度は「TCBZ抵抗性肝蛭を評価するための虫卵孵化試験法の開発」のため、TCBZ感受性および抵抗性の肝蛭分離株の検出に関する実験を行った。まず、実験室内経代の肝蛭株を感染させたラットを用いて、TCBZを経口投与して駆虫率を算出したところ、全ての継代株は高い駆虫率を示しTCBZ感受性であることが判明した。そのため、TCBZ抵抗性肝蛭株の実験的作出を目的として、Fasciola hepatica(Fh)および単為生殖型肝蛭(F. gigantica系統2倍体個体:Fsp)の交雑実験を行った。すなわち、FhおよびFspの成虫子宮内より回収した虫卵を25℃で培養し、ミラシジウムを孵化させ、実験室継代の中間宿主貝(ヒメモノアラガイ)に暴露・感染させた。約40日後に感染貝より遊出したメタセルカリア20個ずつをラット(Wistar系雄6週齢)に経口投与した。6ヶ月後に感染ラットを剖検して肝蛭虫体を回収した。形態学的にFspと確認された成虫の子宮内より虫卵を回収して前述と同様にメタセルカリアを回収、ラットに感染させて6ヶ月後に成虫を回収した。回収虫体の精巣組織をカルノア液で固定して、定法に従って押しつぶし法による染色体を観察したところ、全てのF1成虫は3倍体であり両親肝蛭による交雑が行われたことが確認された。また核リボソームITS1解析においてF1成虫はヘテロ型を示したこと、さらにF1虫体の精巣組織について、HE染色、透過型電子顕微鏡による観察、およびTunel染色法によるアポトーシスの検出を行ったところ、F1は減数分裂異常を示し、精細胞のアポトーシスが確認されたことから、F1は遺伝学的にも雑種であることが確認された。現在、このF1系統のTCBZ抵抗性についての感染実験を継続・実施している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究ではTCBZ感受性および抵抗性の肝蛭分離株の実験室維持が不可欠であるが、当初実験使用を予定していたTCBZ抵抗性株が実際にはTCBZ感受性であることが判明したため、新たにTCBZ抵抗性肝蛭株の実験的作出に関する実験を行った。そのため、当初の研究計画より進行がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
「TCBZ抵抗性肝蛭を評価するための虫卵孵化試験法の開発」のためにはTCBZ抵抗性肝蛭株を確保することを最優先事項として検討する。すなわち、進行中の雑種F1株のTCBZ評価に関する実験を早急に行って判定するとともに、野外より新たな肝蛭分離株を導入し、実験室内維持継系の立ち上げとTCBZ感受性評価を平行して行い、早急にTCBZ抵抗性肝蛭株の確保を試みる。また、海外研究者からTCBZ抵抗性肝蛭株の供与についても検討する。TCBZ抵抗性肝蛭株が得られ次第、TCBZ抵抗性肝蛭を評価するための虫卵孵化試験法の開発に向けた当初の計画を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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