研究課題
F. hepatica と単為生殖型肝蛭2倍体(ITS1型:Fg型、nad1 ハプロタイプ:Fg-C2型)のメタセルカリアをヤギに混合感染させ、得られた成虫のうちITS1型がFg型を示し、単為生殖型肝蛭2倍体であることが確認されたものを親世代とした。これを中間宿主(ヒメモノアラガイ)、終宿主(ラット)のステージを経て継代し、3倍体第2世代までを回収した。交雑により得られた3倍体第1世代成虫は全て3倍体・無精子型であり、ITS1型がFh/Fg型かつnad1 ハプロタイプがFg-C2型であったことから単為生殖型肝蛭2倍体を母方とする交雑により3倍体虫体が作出されたことが証明された。また、3倍体第2世代成虫も全て3倍体かつ無精子型であったが、ITS1型はFh/Fg型とFg型に分かれた。また、この第2世代は次世代虫卵の孵化率が有意に髙かった群(高孵化率群)と低かった群(低孵化率群)に分けられた。組織学的観察において第1世代および第2世代高孵化率群の精巣断面は対照とした単為生殖型肝蛭3倍体の精巣と同様、精原細胞と一次精母細胞が大半を占めており、単為生殖型肝蛭3倍体と同様、一次減数分裂に異常があると考えられた。一方、第2世代低孵化率群では精原細胞の増加が認められ、体細胞分裂異常が疑われた。また、卵巣の組織学的観察において第1世代および第2世代高孵化率群では卵原細胞および一次卵母細胞が対照とした単為生殖型肝蛭3倍体およびF. hepaticaと同様の分布を示した。一方、第2世代低孵化率群では卵原細胞の増加が認められ、体細胞分裂異常が疑われた。以上の結果から第1世代および第2世代高孵化率群では単為生殖型肝蛭3倍体と同様に精子形成は異常かつ卵発生は正常であると考えられた。現在、この第1世代および第2世代のTCBZ抵抗性についての感染実験を継続・実施している。
3: やや遅れている
TCBZ抵抗性肝蛭株の野外分離が困難であったため、Fasciola hepaticaと単為生殖型肝蛭2倍体を用いた交雑実験による作出を試みた。しかし、第1代子孫虫体作出の交雑実験におよそ8ヶ月間を要し、また第2代子孫虫体の作出にも同様に期間を要することから、実験の進行が遅れている。
TCBZ抵抗性肝蛭株の野外分離が困難であったため、交雑虫体のさらなる継代と解析を続け、交雑次世代虫体のTCBZ感受性・抵抗性に関する遺伝的解明とともに繁殖・発生機構を解明する研究にシフトする必要がある。そのためには信頼性の高い交雑マーカーを確立し、親世代と交雑子孫虫体のDNAを含む分子学的特性を解明する。
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