研究課題/領域番号 |
24580421
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
新井 浩司 東京農工大学, 農学部, 准教授 (70293016)
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キーワード | インヒビン / 卵胞刺激ホルモン |
研究概要 |
インヒビンは哺乳類において下垂体からの卵胞刺激ホルモン(FSH)分泌の抑制に主要な役割を占めており、その作用にはFSHβ鎖mRNAの3’末端比翻訳領域(3’UTR)が関与している可能性が考えられる。そのためFSHβmRNAの3’UTRを欠失したマウスでは、インヒビンのフィードバック作用が欠失するものと考えられる。このマウスを作製するため、マウスFshb遺伝子を含むBACクローン、ネオマイシン耐性遺伝子発現カセットおよびジフテリアトキシン発現カセットを用い、FSHベータ鎖mRNAの3’UTRをLHβ鎖mRNAの3’UTRで置き換え、その下流にネオマイシン耐性遺伝子発現カセットを挿入したターゲティングベクターを構築した。また、ES細胞でのスクリーニング条件検討のためのコントロールベクターも作製し、PCR、サザンブロットなどの条件検討を済ませている。 本研究では上述の遺伝子改変マウス下垂体に対するインヒビンの作用を検討する予定であるが、現在ではインヒビンが市販されていないため、ラットインヒビンαとβサブユニットを導入したCHO細胞を作製した。20株ほどの安定発現株の内、一株が比較的多量のインヒビンを分泌することをウエスタンブロットで確認し、その株を無血清培地で培養してその培養上清を500ml程回収した。 インヒビンのFSHβ鎖mRNAに対する作用には内因性のsiRNAが関与していることが考えらる。内在性siRNAは、3’UTR部分をターゲットとすることが多いため、インヒビンが下垂体に作用することで、FSHβ鎖mRNA3’UTR部分のセンス鎖RNAに相補的な短鎖のRNAが増加するはずである。その短鎖RNAの検出をリボヌクレアーゼプロテクションアッセイで行うため、FSHβ鎖mRNA3’UTR部分全体をカバーするように200~300bpの鋳型cDNAを、5種類作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大学内における本研究以外の業務が想定していた以上に増加し、本研究に予定していたエフォートを投入することが出来なかったため。
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今後の研究の推進方策 |
作製したターゲティングベクターを用いてFSHβ鎖mRNAの3’UTRを欠失した遺伝子改変マウスを作製する。このマウスについて、産仔数、春期発動、発情周期、排卵数、血中各種ホルモン濃度、下垂体のインヒビンに対する反応性などを調べ、遺伝子改変がマウスの生殖生理に与える影響を検討する。また、実験に必要なインヒビンを確保するため、抗インヒビン抗体を結合させたカラムを作製し、インヒビン発現CHO細胞株の培養上清からインヒビンを精製する。さらに、インヒビンが内在性siRNAを介して作用している可能性を検討するため、FSHβ鎖mRNAの3’UTRセンス鎖プローブを用いたリボヌクレアーゼプロテクションアッセイを行い、FSHβ鎖mRNAの3’UTRに相補的な短鎖RNAのインヒビンによる増減を調べる。
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