硫化水素は,火山性ガスに含まれる有毒ガスとしてよく知られているが,同様に有毒ガスとして知られている一酸化炭素,一酸化窒素とともに生体内で産生され,重要な役割を担っていることが明らかとなった.本研究では,痛みを認識するセンサーの一つであるTRPA1チャネルに作用する硫化水素が酸性条件下で細胞内に移行しやすくなり,その反応性を高めることが明らかとなった.また,脊髄での知覚神経の伝達では,硫化水素が増強あるいは抑制に働き,複雑な調節を行う可能性が示された.生体内の硫化水素の産生を調節することは鎮痛薬を開発する糸口となりうるかも知れない.
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