研究課題/領域番号 |
24580427
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
芳賀 猛 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (20315360)
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研究分担者 |
後藤 義孝 宮崎大学, 農学部, 教授 (30142136)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | パピローマウイルス / 新型 / 乳頭腫 |
研究概要 |
1)通常の牛(学名:Bos Taraus)と同じ牛属に分類され、中国の高地で家畜化されたヤク(学名:Bos grunniens)のパピローマを解析したところ、新規のパピローマウイルス(PV)候補が確認されたため、解析を進めた。既に我々は新しい型の牛パピローマウイルス(BPV)を宮崎の牛の病変部から検出し、BPV12型(BPV-12)と命名して論文公表し、認められているため、当初、ヤクの新型PVの名称として、BPV-13の提唱を試みた。しかし、ウイルスの分類に関するゴールドスタンダードとなる、国際ウイルス分類委員会PV研究部会委員長との協議で、ヤクは同じ牛属であるが、別の動物種に由来するパピローマであることから、ヤクの学名:Bos grunniensにちなみ、BgPV-1(ヤクパピローマウイルス1型)という名称を提案することになった。BgPV-1が検出された病変部は、病理組織的解析により、繊維性パピローマと診断され、抗BPV抗体による免疫染色も陽性となり、ウイルス蛋白が発現していることが示された。これらの成果は、論文として認められ、公表するに至った。 2)2011年に我々が発見した、BPV-12が関与する牛の上皮性パピローマの病変部から、一部遺伝子を欠損した環状ゲノム(BPV-12-del)が存在することを見いだし、解析を行った。シークエンス結果より、BPV-12が約7.2kbであるのに対し、BPV-12-delは約3.4kbで、その結果は、サザンブロットでも確認された。リアルタイムPCRを用いて、病変部に存在するBPV-12ゲノムの内のBPV-12-delの割合を求めたところ、42%がBPV-12-delであることが示された。BPV-12-delの生物学的意義は不明だが、これまでこのような報告はなく、本結果は、初めての欠損環状PVゲノムの報告として、論文公表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規BPVの検索として、解析中であった新型BPV候補のゲノム解析とクローニングを完了し、国際ウイルス分類委員会とのやり取りをふまえて、牛属のヤクから新たに見いだされたパピローマウイルス(PV)としてBgPV-1を提唱した。病変部の病理組織学的解析とあわせて、BgPV-1の名称が論文として認められたため、当初の第一の目的は達成された。 また、BPV発病に関与する因子として、我々が発見した新型BPV12の病変部で見いだされた、遺伝子欠損BPVゲノム(BPV-12-del)が病変部にどの程度存在するか、Realtime PCRにより定量化するとともに、サザンブロットによりBPV-12-delの存在を確認した。BPV-12-delの生物学的意義の解析が今後の課題であるが、本実験結果は、初めての欠損環状PVゲノムの報告として、論文公表されたため、計画は順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
PV感染を疑う病変部について、新規PVの検索ならびにPV陽性の腫瘍の解析を継続して実施するとともに、PVの型と病変との関係について、関連があるかを解析する。 BPVdelの存在意義については、他の検体においても存在するかどうかを継続して検索し、解析を進める。実験の進捗状況次第であるが、可能であれば細胞培養レベルでの生物学的意義を解析する実験を計画する。BPVdelならびに完全長BPVをそれぞれ、あるいは同時に細胞内へ導入し、その導入細胞の細胞増殖や細胞死に与える影響、細胞性因子との関連を解析する。 以上の結果をまとめ、学会や論文等で発表していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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