研究課題/領域番号 |
24580427
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
芳賀 猛 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (20315360)
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研究分担者 |
後藤 義孝 宮崎大学, 農学部, 教授 (30142136)
上間 亜希子 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (20630156)
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キーワード | パピローマウイルス / 牛 / 乳頭腫 / 遺伝子解析 |
研究概要 |
牛の舌に発生した腫瘤よりパピローマウイルス(PV)ゲノムを検出し、解析を行った。シークエンス解析によりPVの型を同定したところ、これまで舌からの病変報告がない牛パピローマウイルス10型(BPV10)であったため、全ゲノムをクローニングし、塩基配列を決定した。その結果、既報のBPV10と比較して、E1蛋白遺伝子領域に129bpの欠失が見つかった。我々は以前に発見したBPV12において、欠損環状PVゲノムが同じ病変部に完全PVゲノムと共存していたことを見出していたため、BPV10についても、完全PVゲノムとの共存や他のPV型との共感染を検討した。特異的プライマーによるゲノムPCR、RT-PCRによるmRAN解析ならびにサザンブロットによる解析を試みた結果、この欠損BPV10のみが検出された。またこのBPV10が検出された病変部は、病理組織的解析により上皮性パピローマと診断され、抗BPV抗体による免疫染色でウイルス蛋白が発現していることが確認された(本年度学会および論文発表)。 また我々は昨年、ウシ属のヤクから新規PVを発見し、BgPV-1と命名して論文公表したが、ほぼ同時期にインドのグループより、ヤクからBPV 1とBPV2を検出した内容の論文が発表された。それを受けてインドのヤク由来のBPVをGenBankのデータを元に我々が解析したところ、彼らの示したBPV 1の塩基配列は、BPV 1でもBgPV-1でもない、新たなPVの可能性があることが判明した。彼らはウイルス型特異的プライマーを用いたPCRによりBPVの型を特定しており、今回の事例を参考に、我々は、いまだに未発見の型が多く存在する可能性が高いBPVの型解析においては、より厳密な解析が必要であると主張し、国際ウイルス分類委員会PV研究部会委員長であるBurk博士らと共に、Guest Editorial を執筆して発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本事業の当初目的に掲げた3項目のいずれについても、すでに成果を上げている。1)新規BPVの検索:事業初年度に、牛属のヤクの乳頭腫から新規のPVとしてBgPV1を発見・命名し、論文発表を行った。2)腫瘍に関与するBPVの性状解析:牛の舌で見つかった乳頭腫から、BPV10を初めて検出し、全ゲノムならびに病理学的解析の結果を論文発表した。3)BPV発病に関与する因子の解析:以前我々が発見したBPV12の由来病変部に、一部遺伝子欠損したBPV12-delが共存していることを発見し、解析結果を論文発表した。また、これまで海外で報告されたBPVの解析法の盲点を見いだし、未知の型が多いBPVの解析には、より厳密な解析法が必要であるという主張をGuest Editorial で発信することもできた。 以上のことから、本研究課題である、牛パピローマウイルスの病原性解析に、十分貢献する成果が上がっていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
新規PVの検索ならびにPV陽性の腫瘍の解析を継続して実施する。また、病態とウイルスとの関係を明らかにするため、ウイルス遺伝学的解析や病理的解析に加え、可能であれば細胞培養レベルでの生物学的意義の解析実験や病態のマーカーとなる因子の探索を行う。これらの成果をまとめ、論文として公表していく。
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