平成26年度は次の研究を行った。 1. 単球/マクロファージ(MΦ)系株J774.1に遺伝子導入して,細胞内ドメインをGFPに置換したEphA2を発現する亜株EphA2δC-GFP-J774.1,ephrin-A1発現をノックダウンさせた亜株ephrin-A1-KD-J774.1と対照株GFP-J774.1を作製した。 2. EphA2-Fcあるいはephrin-A1-Fcをストライプ状に,Matrigelを全面にコートした基質に対する接着性を上記の細胞で検討した。その結果 (1) EphA2δC-GFP-J774.1,ephrin-A1-KD-J774.1,GFP-J774.1いずれもEphA2-Fcおよびephrin-A1-Fcコート領域の細胞密度が高くMatrigel基質への接着性が上ること,(2)個々の細胞を比較すると,対照株よりもEphA2δC-GFP-J774.1およびephrin-A1-KD-J774.1の方が接着面積を広げて細胞質が拡大し,接着性は上昇することが明らかになった。 3. 単球/MΦ系細胞と血管内皮細胞の共培養系でEphA2およびephrin-A1が血管内皮細胞層通過に及ぼす影響を検討した。血管内皮細胞層上にEphA2δC-GFP-J774.1,ephrin-A1-KD-J774.1またはGFP-J774.1を播種し,基底側への浸潤性状を比較した結果,基底側への移動は対照株の方が顕著であった。現在,統計解析を進めている。 4. 前年度に,EphA2は脾洞にephrin-A1は脾洞および辺縁帯の毛細血管に発現することを明らかにした。クロドロン酸リポソーム(CL)腹腔内投与1日後の赤脾髄MΦが選択的に除去された脾臓において,EphA2とephrin-A1発現は有意に上昇することを明らかにした。CL投与マウスに異なる色の細胞追跡用蛍光色素で標識した同数のEphA2δC-GFP-J774.1と親株J774.1を静注し,脾臓に浸潤した蛍光標識細胞の分布と細胞数を比較した。その結果,親株と比較して3倍を超えるEphA2δC-GFP-J774.1細胞が脾臓内に浸潤しており,ほとんど細胞は赤脾髄および辺縁帯に局在していた。
|