研究課題/領域番号 |
24580431
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
半澤 惠 東京農業大学, 農学部, 教授 (00181032)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ウズラ / MHC / TRIM / CD1 / DNA多型 / ハプロタイプ / ODF3 / ニワトリ |
研究概要 |
1.拡張MHC領域の構造解析 ニホンウズラ主要組織適合性複合体領域(拡張MhcCoja領域)のもっともセントロメア寄りにBG/LEC亜領域に隣接するTRIM亜領域を同定した.またもっともテロメア寄りにMHC class I亜領域に隣接するCD1亜領域を同定した.これら亜領域の位置関係はニワトリと相同であったが,CD1亜領域の下流にニワトリでは染色体上の位置が特定されていない精子尾部構成タンパク質の一種をコードするODF3遺伝子2座位を確認した. 2.多型カタログの作成 (1)高密度DNA多型マーカーの設計:TRIM亜領域に3種類(HEP21,TRIM39.2およびBTN2),CD1亜領域に2種類(CD1.1およびCD1.2),MHC class IIB亜領域に2種類(TapasinおよびDCB1),MHC class I亜領域に1種類(TAP1),計8種類のDNA多型マーカーを設定した. (2)ハプロタイプの解析:11系統321個体を供試して,12種類のDNA多型マーカー(HEP21,TRIM39.2,BTN2,DBB1,Tapasin,DCB1,DMB2,DMB2-DMB1遺伝子間,TAP1,TPA2,CD1.2およびCD1.1)を用い46種類のハプロタイプを確認した.AMRP系を除く10系統は複数のハプロタイプを含んでいたが,AMRP系は1種類のハプロタイプに固定されていた.DBB1~Tapasin~DCB1は完全連鎖(ハプロタイプブロック)であったが,主要8ハプロタイプ以外のハプロタイプは組換えによって生じたことが示唆された. (3)各ハプロタイプの遺伝子構造の比較:DBB1~Tapasin~DCB1およびCD1.1~CD1.2の構造は主要8ハプロタイプで共通していたが,MHC class IIB遺伝子座数のハプロタイプ間差が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.拡張MHC領域の構造解析 目標としたTRIM亜領域およびCD1亜領域の構造解析は概ね達成され,それぞれ雑誌論文として発表した.加えてCD1亜領域の下流にニワトリでは染色体上の位置が特定されていない精子尾部構成タンパク質の一種をコードするODF3遺伝子2座位を確認した. 2.多型カタログの作成 (1)高密度DNA多型マーカーの設計:TRIM亜領域およびCD1亜領域に鳥類における最初のDNA多型マーカーを計5種類設定した.また,MHC class IIB亜領域に2種類,MHC class I亜領域に1種類のDNA多型マーカーを設定した.約250 kbの領域に既存のマーカーを併せ,計12種類のDNA多型マーカーを整備した.今後,MHC class I亜領域を中心にさらにDNA多型マーカーを設定する必要がある. (2)ハプロタイプの解析:ハプロタイプブロックの検出:8種類の主要ハプロタイプを検出すると共に,DBB1~Tapasin~DCB1およびTAP1~TPA2は完全連鎖(ハプロタイプブロック)であることを確認したが,一方,他の遺伝子間領域の組換えを示唆するハプロタイプが検出された.特にCD1.1とCD1.2との間の狭い遺伝子間領域(1.2 kb)に組換え領域が存在するこが示唆された. (3)各ハプロタイプの遺伝子構造の比較:主要8ハプロタイプにおいてDBB1~Tapasin~DCB1,CD1.1~CD1.2の遺伝子構造は共通していることを確認し,一方,MHC class IIB遺伝子座の数に差異があることを示唆した.今後,TAP1~TPA2間の遺伝子構造およびMHC class I亜領域の遺伝子構造を確認する必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
1.DNA多型マーカーの特徴付け (1)主要ハプロタイプにおけるMHC class IIBおよびMHC class Iの機能的遺伝子座の同定と各遺伝子座の抗原結合領域の多様性とmRNA転写量との関係の解析.(2)Tapasinのイントロンに認められた著しいDNA多型の明確化,(3)DMB1~DMB2へのDNA多型マーカーの設定. 2.各ハプロタイプの遺伝子構造の比較 (1)TAP1~TAP2の遺伝子構造のシークエンシングによる決定.(2)MHC class IIBおよびMHC class I遺伝子座数のハプロタイプ間差異の精査.(3)各ハプロタイプの多型カタログの整備. 3.戻し交配家系解析:組換え領域の同定 戻し交配家系を用いた組換え領域の推定,組換えホットスポット配列の同定. 4.ハプロタイプと免疫応答能との相関解析 各ハプロタイプの抗体産生能(自然抗体濃度,免疫抗体価:マレック病ワクチン,各種タンパク抗原),コクシジウム原虫感受性,腸内細菌叢,ならびに繁殖成績(受精率,孵化率)との関係の推定.組換え個体を用いた免疫学的特性に差異をもたらす責任遺伝子の追求.
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次年度の研究費の使用計画 |
おもに,消耗品費として塩基配列の解析用試薬,器具機材の購入に充てる.また,旅費は国内学会大会での発表の為の旅費,試料提供に対する謝金,その他,投稿論文の掲載料の支出を予定している.
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