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2012 年度 実施状況報告書

孵化前後のニワトリ肝臓におけるエネルギー源脂質変換機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 24580434
研究種目

基盤研究(C)

研究機関日本獣医生命科学大学

研究代表者

田中 実  日本獣医生命科学大学, 日本獣医生命科学大学応用生命科学部, 教授 (90024736)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワードコレステロールエステル代謝 / ニワトリ肝臓 / 胆汁酸 / ニューロテンシン / 遺伝子発現
研究概要

1.孵化前後のニワトリ肝臓におけるAcyl-CoA:cholesterol acyltransferase (ACAT)-1とLysosomal acid lipase (LAL)の遺伝子発現動態の解明を行なった。ACAT-1遺伝子の発現は孵化の7日前から孵化後5日目まで高く、その後減少していった。また、LALの発現は孵化の7日前から孵化後1日目までは定常レベルで推移し、孵化後3日目から10日目まで増加し、14日目には定常レベルに戻った。
以上の結果から、孵化前後の肝臓におけるコレステロールエステルの合成と分解にはそれぞれACAT-1とLALが関与していることが強く示唆された。
2.ニワトリにおけるACAT-2のcDNAクローニングによる同定とそのタンパク質構造の解明をおこなった。クローニングしたニワトリのACAT-2 cDNAがコードするタンパク質のアミノ酸配列は哺乳類のACAT-2のアミノ酸配列と高い相同性を有し、酵素活性に必要なアミノ酸も保存されていた。したがって、ACAT-1と同様ACAT-2も孵化時期の肝臓におけるコレステロールエステル合成に関与していることが示唆された。
3.ニワトリ消化管における胆汁酸輸送タンパク質SLC10A2のcDNAクローニングによる同定とそのタンパク質構造の解明および孵化前後の遺伝子発現動態の解明をおこなった。ニワトリのSLC10A2 cDNAがコードするタンパク質のアミノ酸配列は哺乳類のSLC10A2のアミノ酸配列と高い相同性を有し、回腸と結直腸で特異的に発現しており、両組織ともに孵化後から発現が検出され7日目まで増加し、以後減少していった。こうした発現変動パターンより、SLC10A2は孵化後の肝臓でのコレステロールエステルの分解により生成した遊離コレステロールから合成された胆汁酸の腸への輸送に働いていることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的を達成するための研究項目は(1)孵化前後のニワトリ肝臓におけるコレステロール合成酵素ACAT-1と分解酵素LALのタンパク質レベルでの同定と精製、(2)ACAT-1とLALの酵素学的性質および活性調節因子の解明、(3)孵化前後のニワトリ肝臓におけるACAT-1とLALならびに胆汁酸およびTG合成に働く酵素の活性と遺伝子発現の動態の解明、(4)脂質変換過程に働く酵素の活性と遺伝子発現のNTR-1阻害剤を用いたニューロテンシン応答性の解明、(5)培養ニワトリ肝細胞におけるニューロテンシン応答性因子の検証と各因子の細胞内シグナリング経路の解明であり、このうち平成24年度に研究項目(1)と(2)を達成する予定であった。しかし、ニワトリ肝臓にはコレステロールエステル合成酵素としてACAT-1以外にACAT-2も存在するという新たな研究成果が得られた。この知見は本研究にとって非常に重要なものであったが、肝臓において同じ酵素反応を触媒する2種類の酵素が存在することが判明したため、それぞれの酵素を精製し酵素学的性質を調べることが極めて困難な状況となった。そこで平成24年度には研究項目(3)に取り組み、ACAT-1とLAL遺伝子の孵化前後の発現動態の解明をおこない、各酵素がそれぞれ肝臓におけるコレステロールエステルの合成と分解に関与していることを示唆する知見を得た。さらに、新たに胆汁酸の腸への輸送に働くSLC10A2のcDNAをクローニングし、孵化前後の遺伝子発現動態を解明した。その結果SLC10A2遺伝子は回腸と結直腸で特異的に発現しており、その発現量は孵化後急激に増加したことから、肝臓に蓄積したコレステロールエステルに由来する胆汁酸の腸への吸収に働いているタンパク質であることが示唆された。こうした新知見が得られ、本研究はおおむね順調に進展していると評価できる。

今後の研究の推進方策

今後の研究推進方策としては、まず、研究項目(1)のニワトリ肝臓におけるACAT-1、ACAT-2とLALのタンパク質レベルでの同定をおこなうため、各タンパク質に対する特異抗体を作製し、ウエスタンブロット分析によりタンパク質の検出、同定をおこなう。当初予定していた酵素の精製は、肝臓にACAT-1に加えてACAT-2も存在するという知見が得られたことから、酵素活性により両酵素を区別して精製することが極めて困難となった。酵素の精製および酵素学的性質の解明はすでに哺乳類の酵素において明らかにされており、本研究には必須ではない。したがって、遺伝子(mRNA)およびタンパク質レベルでの同定にとどめ、酵素の精製および酵素学的性質の解析に使用予定であった研究費を次年度に繰り越し、本研究にとってより重要な研究項目(3)の継続として、孵化前後のニワトリ肝臓におけるACAT-2、胆汁酸およびトリグリセリド合成律速酵素のリアルタイムPCRによるmRNAの発現変動の解析を進める。さらに研究項目(4)の脂質変換過程に働く酵素の活性と遺伝子発現のNTR-1阻害剤を用いたニューロテンシン応答性の解明、研究項目(5)の培養ニワトリ肝細胞におけるニューロテンシン応答性因子の検証と各因子の細胞内シグナリング経路の解明を行い、本研究の目的を達成する。

次年度の研究費の使用計画

次年度の研究費の使用計画は下記のとおりである。
1.ニワトリ受精卵と雛用飼料の購入費に使用する。
2.ACAT-1、ACAT-2、LAL、SLA10A2および新たに見いだされる孵化時の脂質変換過程に働く因子のタンパク質の同定のため、各タンパク質に対する特異抗体の作製に必要なポリペプチドの合成および抗体作製費に使用する。
3.孵化時の脂質変換過程に働く因子の遺伝子およびタンパク質の発現動態の解明のための逆転写反応、リアルタイムPCR、ウエスタンブロット分析等に必要な酵素類、一般試薬類、ニューロテンシン阻害剤、プラスチック器具等の消耗品の購入費に使用する。
4.研究成果を日本家禽学会、日本畜産学会、日本比較内分泌学会で発表するための旅費および論文投稿費に使用する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2013

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] ニワトリのコレステロールエステル合成および分解酵素の構造と孵化前後の肝臓における発現変動2013

    • 著者名/発表者名
      西田匡宏、中尾暢宏、對馬宣道、田中 実、
    • 学会等名
      日本家禽学会2013年度春期大会
    • 発表場所
      広島市
    • 年月日
      20130329-20130329

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公開日: 2014-07-24  

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