平成24年度の本研究において、ニワトリ肝臓におけるコレステロールエステル合成酵素の遺伝子の発現が孵化前は高く保たれ孵化後には減少すること、コレステロールエステル分解酵素の遺伝子の発現は孵化後に増加すること、腸管でのナトリウムイオン依存性胆汁酸輸送タンパク質の遺伝子の発現が孵化後に増大することを明らかにした。次いで平成25年度の研究において、エネルギー代謝の調節に働くニューロテンシンの腸管における遺伝子発現が孵化前後に一過性に増大すること、コレステロール合成経路の主要酵素であるアセトアセチルCoAチオラーゼの肝臓における遺伝子発現が孵化後に増大することを明らかにした。 最終年度の平成26年度においては、肝臓における胆汁酸輸送タンパク質の遺伝子発現の増強作用を有する脳下垂体ホルモンのプロラクチンの分泌が孵化前に多く孵化後に減少することに着目し、肝臓におけるプロラクチン受容体遺伝子の孵化前後の発現変動を調べた。その結果、プロラクチン受容体遺伝子の発現も孵化前には高く孵化後に減少することが明らかになった。また、脳下垂体におけるプロラクチン受容体遺伝子の発現も孵化前に高く孵化後に減少した。孵化前の肝臓においては、蓄積されているコレステロールエステルの加水分解によりコレステロールが生成し、コレステロールから胆汁酸が合成される。したがって、プロラクチンが合成された胆汁酸の輸送に働き、そのプロラクチンの脳下垂体における合成はプロラクチン受容体を介したプロラクチンのオートクライン作用により調節されていることが示唆された。すなわち、プロラクチンも孵化後のエネルギー源脂質の変換に関与している因子である可能性が考えられる。
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