研究課題
血管形成やその機能は、組織の生存やその機能発現に重要な役割を果たす。生殖においても、血管の新生、増殖、退行や透過性の変化が観察される。これら血管形成や機能の調節は生殖効率に多大な影響を及ぼすが、その機構に関しては未解明の部分が多い。血管形成や機能調節には、組織内部の酸素不足による解糖系の亢進による低酸素、低pH(酸性)などの微小環境が大きく影響する。低酸素状態に関してはVEGFシステムを介して血管新生を誘導する系の解析が進んでいる。一方、低酸素に付随して生じる低pH状態がどのような機構で血管形成、機能を制御しているのか、またその意義に関しては全く不明である。OGR1、GPR4、TDGA8、G2Aは細胞外プロトンを感知するユニークなGPCR群であることが我々のものを含め、報告されている(OGR1ファミリー)。我々はpHの低下に伴う血管形成、機能の調節に、このファミリーが関与するものと考えている。この仮説の検証を目指し前年度は、ゼブラフィッシュのゲノムデータベースに存在するOGR1、GPR4、G2Aの各ホモログが、ヒト、マウスのものと同様に、細胞外プロトンを感知する受容体であることを明らかにした。本年度は、これら受容体のどのアミノ酸がプロトンを感知するのか、またどのような物質が受容体のアンタゴニストとして作用するのかを、調べた。その結果、受容体中の特定のヒスチジン残基がプロトンを感知すること、銅イオン、サイコシンがアンタゴニストとして作用しうることが、明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
ゼブラフィッシュOGR1ファミリー受容体のプロトン感知性アミン酸の特定と、アンタゴニスト候補を明らかとした。これらの受容体に関する情報は、今後の解析に有用なものとなる。
銅イオン、サイコシンがゼブラフィッシュのOGR1受容体ファミリーのアンタゴニストとして作用することが本研究の結果、明らかとなった。今後、これらの物質を用いてこの受容体ファミリーの生理機能を解析する予定である。
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明治大学農学部研究報告
巻: 63 ページ: 103-110
PLoS One
巻: 11 ページ: e79985