研究課題/領域番号 |
24580437
|
研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
村上 賢 麻布大学, 獣医学部, 教授 (80271360)
|
キーワード | 破骨細胞分化 / 転写因子Mitf |
研究概要 |
破骨細胞は骨吸収の責任細胞であり、この破骨細胞の数と機能の制御の破綻が骨代謝異常に繋がる。本研究では、破骨細胞を始めとした幾つかの組織(細胞)でしか発現していない転写因子であるMitfが破骨細胞の分化・機能で果たす役割とその機構を明らかにすることを第一の目的としている。 研究初年度に、RAW264.7細胞及びマウス骨髄初代培養細胞を用いて、RANKL刺激による破骨細胞分化過程におけるMitf-Eの誘導と分化マーカ―遺伝子の発現量や形態変化を示した。続いて、TGF-βには、Mitf-Eの遺伝子発現増を介してRANKL誘導性の破骨細胞形成を高める活性があり、さらに細胞接着・融合に関与する各種遺伝子の発現促進や骨吸収能の増強を示した。平成25年度は、このTGF-β刺激におけるMitf-Eの発現促進機序を細胞内シグナル伝達経路から解析した。Mitf-Eプロモーター領域を用いたレポーターアッセイ法による解析から、TGF-βは、通常のSmad経路というよりは非Smad経路であるJNKの活性化、続いて活性化されたc-JunによってMitf-Eの発現を正に制御している可能性を示した。 本研究では、伴侶動物の長寿化に伴う病気にも注目し、イヌの破骨細胞形成におけるMitfの発現・機能を解明することを第二の目的としている。平成25年度は、イヌの大腿骨より採取した骨髄由来単球細胞を用いて、M-CSFとRANKLのそれぞれの濃度を検討し、破骨細胞を確実に形成する系を確立した。形成された細胞はTRAP陽性多核巨細胞で機能的にも骨吸収能を有し、mRNAレベルでも破骨細胞分化関連遺伝子(TRAP、CtsKなど)が有意に増加していることを確認した。また、Mitf-Eの遺伝子発現はマウスと同様に破骨細胞分化初期に大きく増加していた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成25年度までに予定していた破骨細胞分化におけるMitfの機能や発現制御に関する分子生物学的解析は、ほぼ終了した。即ち、マウスのマクロファージ系株化細胞RAW264.7細胞および骨髄由来初代培養細胞を用いて、2本鎖RNA干渉法によるMitf遺伝子の発現ノックダウンやMitf-E遺伝子を強制発現した安定株を利用して解析し、破骨細胞分化におけるMitf-Eの重要性を示した。次に、RANKL誘導性破骨細胞分化系におけるTGF-β刺激では破骨細胞分化が促進することを形態及び遺伝子発現レベルで調べ、さらにMitf-Eの遺伝子発現の上昇を示した。これらのデータは、国際雑誌に発表できた。さらに、分化過程の分子機序解明に関してより深化させた研究として、TGF-β刺激におけるMitf-Eの発現促進機序を細胞内シグナル伝達経路から解析できた。 また、平成26年度に予定していた、基礎的知見がほとんどないイヌの骨髄由来初代培養細胞による破骨細胞分化系を平成25年度に確立できた。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度に確立できたイヌの骨髄由来初代培養細胞による破骨細胞分化系を用いて、イヌの破骨細胞分化系におけるMitf-E とTGF-βの重要性と役割を、形態学的、分子生物学的に解析する。イヌ用プライマーの設定や抗体の入手など遺伝子発現レベルでの分子機序を解析するための準備を整える。マウスでこれまでに得ているデータとの比較を行い、イヌでの破骨細胞分化の特徴付けを行う。イヌにおける破骨細胞分化系が当初の予定よりやや早く確立できたため、遺伝子レベル及びタンパク質レベルの両方からイヌの破骨細胞分化におけるMitfの遺伝子発現制御機構や細胞内情報伝達因子との相互作用、TGF-βの役割を明らかにするように、当初の目的をいくらか発展させる。
|