破骨細胞は骨吸収の責任細胞であり、この破骨細胞の数と機能の制御の破綻が骨代謝異常に繋がる。本研究では、破骨細胞を始めとした幾つかの組織(細胞)でしか発現していない転写因子であるMitfが破骨細胞の分化・機能で果たす役割とその機構を明らかにすることを第一の目的としている。H24、25年度に、RAW264.7細胞及びマウス骨髄初代培養細胞を用いて、RANKL刺激による破骨細胞分化過程におけるMitf-Eの誘導と分化マーカ―遺伝子の発現量や形態変化を示した。続いて、TGF-βには、Mitf-Eの遺伝子発現増を介してRANKL誘導性の破骨細胞形成を高める活性があり、さらに細胞接着・融合に関与する各種遺伝子の発現を促進し、骨吸収能を増強することを示した。また、このTGF-β刺激におけるMitf-Eの発現促進機序を細胞内シグナル伝達経路から解析した。これらのデータの一部は、国際雑誌に論文発表した。 本研究では、伴侶動物の長寿化に伴う病気にも注目し、イヌの破骨細胞形成におけるMitfの発現・機能を解明することを第二の目的としている。平成25年度に確立したイヌ骨髄由来初代培養細胞による破骨細胞分化系を用いて、Mitf-E とTGF-βの役割を、形態学的、分子生物学的に調べた。その結果、マウスと同様にイヌでも破骨細胞分化過程でMitf-Eが強く発現しており、破骨細胞分化におけるMitf-Eの重要性が示唆された。一方、破骨細胞形成において、マウスとは異なり、イヌでは形態的にも分化マーカー遺伝子レベルにおいてもTGF-βが濃度依存的に抑制的に働くことを見つけた。イヌでは、TGF-β刺激でMitf-E発現を抑制した。破骨細胞分化におけるMitf-Eの重要性と、分子メカニズムは不明であるもののTGF-βの動物種間での役割の違いを明らかとした。
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