食塩投与による高血圧症が糖尿病性末梢神経症に与える影響の解析するために前年度に実施した実験すなわち、10週齢の雄WBN/Kobラットにアロキサン(AL)を1回静脈内投与した後、滅菌水で飼育したAL群、アロキサン投与3週後から1%食塩水で飼育したAL+NaCl群、13週齢から1%食塩水で飼育したNaCl群の計3群(各群10頭)に関する後肢末梢神経の運動神経伝導速度および感覚神経伝導速度の測定、末梢神経病変の光学顕微鏡による定性的および半定量的解析、末梢神経病変の透過型電子顕微鏡による定性的、半定量的解析を実施した。 結果:AL+NaCl群の血圧は他の2群と比較し22週以降有意に上昇したが、ALおよびNaCl群においては血圧の変動は見られなかった。AL+NaCl群およびAL群の運動神経伝導速度および感覚神経伝導速度は、NaCl群と比較し有意に低下したが、両群間に差はなかった。組織学的にAL+NaCl群およびAL群において、軸索萎縮および神経内鞘の線維化がみられ、AL+NaCl群で高度であった。さらに、AL+NaCl群群では神経内鞘の血管壁の肥厚も加わった。これらの病変は近位側の坐骨神経よりも遠位側の脛骨や腓腹神経で強度であった。 結論:糖尿病および食塩誘発による高血圧の合併では、血管病変形成とともに、末梢神経病変が増悪することが明らかとなった。
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