研究課題
本研究では、牛卵子成熟および初期胚発生能に及ぼす細胞質内オートファジー・リソソーム系のストレス応答機構を解明し、その制御による高品質な牛胚生産を目的として、以下の研究を実施した。具体的には、1)酸化、暑熱等のストレス因子がリソソームへの傷害に及ぼす影響の評価解析と成熟・初期発生への影響、2)リソソームが関与する蛋白質分解・代謝に関わるオートファジー動態並びに、システインプロテアーゼであるカテプシン類のストレス応答とアポトーシス誘導に及ぼす影響、3)カテプシン類の活性制御によるストレス負荷下での卵子成熟・胚発生への影響解析、について、受胎率向上が望める高品質の胚生産につながる基盤的な研究を推進することを目的として研究に取り組んだ。二年目までに、 1)体外成熟培養時の暑熱ストレス負荷によりみられた体外受精後の胚盤胞発生率の低下は、カテプシン阻害剤の添加によって改善効果がみられた。2)体外成熟培養時の暑熱ストレス負荷によって卵子のカテプシンBおよびカスパーゼ3の発現が有意に増加したが、カテプシン阻害剤の添加によってそれらの発現が抑制され、アポトーシス誘導との関係が示唆された。併せて、暑熱により増加した卵子卵丘細胞のTUNEL陽性細胞数は、カテプシン阻害によって改善された。3)加えて、卵子形成の場である卵巣の退行時黄体組織ではオートファジー、リソソーム並びにカテプシン活性が劇的に増加しており、卵子発育につながる周期調節に大きく関わっていることが明らかになった。
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Journal of Reproduction and Development
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