研究課題/領域番号 |
24580441
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人医薬基盤研究所 |
研究代表者 |
山田 博司 独立行政法人医薬基盤研究所, 創薬基盤研究部, 研究員 (30343304)
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研究分担者 |
岡本 成史 独立行政法人医薬基盤研究所, 創薬基盤研究部, 客員研究員 (50311759)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 鳥インフルエンザ |
研究概要 |
鳥由来のインフルエンザウイルスを、MDCK細胞で高い増殖能を有するワクチン用の種ウイルスにするための目的で、初代培養株と30代以上の継代株で100倍以上も増殖能に差のあるH8N4, H10N2, H12N5型の3種類のウイルス株を得た。これらの3種類の鳥インフルエンザウイルスについて、初代ウイルスと変異ウイルスの両方について、ウイルス感染細胞の培養上清から抽出したウイルスゲノムRNAから逆転写反応でcDNAを得て、リバースジェネティクス法用のベクターpHH21にクローニングし、全塩基配列を決定した。 初めに、増殖能増強に関与する遺伝子分節を確定するために、リバースジェネティクス法を用いて、高い増殖能を獲得した変異ウイルスと初代ウイルスのリコンビナントウイルスを再合成し、増殖能に違いがあることを確認した。次に、初代ウイルスの8本のゲノム分節のうち、1分節のみを高い増殖能を獲得した変異ウイルス由来の分節に置換したリアソータントを作製し、増殖能を検討したところ、H8N4, H10N2, H12N5型の3種類全てで、PB2分節とHA分節を入れ替えたリアソータントについて、MDCK細胞における増殖能が増強した。逆に、変異ウイルスの8本のゲノム分節のうち、1分節のみを初代ウイルス由来の分節に置換したリアソータントを作製し、増殖能を検討したところ、H8N4, H10N2, H12N5型の3種類全てで、PB2分節とHA分節を入れ替えたリアソータントについて、MDCK細胞における増殖能が減少した。よって、H8N4, H10N2, H12N5型の3種類全てで、PB2分節とHA分節が増殖能に関係する遺伝子であることが明らかとなった。PB2分節について、塩基配列を決定したところ、627番目のグルタミン酸がリシンに変異していた。HA分節についても塩基配列を決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初代ウイルスの8本のゲノム分節のうち、1分節のみを高い増殖能を獲得した変異ウイルス由来の分節に置換したリアソータントを作製し、増殖能を検討したところ、H8N4, H10N2, H12N5型の3種類全てで、PB2分節とHA分節を入れ替えたリアソータントについて、MDCK細胞における増殖能が増強した。逆に、変異ウイルスの8本のゲノム分節のうち、1分節のみを初代ウイルス由来の分節に置換したリアソータントを作製し、増殖能を検討したところ、H8N4, H10N2, H12N5型の3種類全てで、PB2分節とHA分節を入れ替えたリアソータントについて、MDCK細胞における増殖能が減少した。よって、H8N4, H10N2, H12N5型の3種類全てで、PB2分節とHA分節が増殖能に関係する遺伝子であることが明らかとなった。PB2分節について塩基配列を決定したところ、627番目のグルタミン酸がリシンに変異していた。このように、H8N4, H10N2, H12N5型の3種類全てで、PB2分節とHA分節が増殖能に関係する遺伝子であること、PB2分節については、627番目のグルタミン酸がリシンに変異することで、増殖能が高まることが明らかとなり、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
変異ウイルスと初代ウイルスとの比較によって明らかとなった全てのアミノ酸変異について、初代ウイルスの遺伝子に点変異を加えることによって変異ウイルスのアミノ酸変異部分が反映されるようにする。次いでリバースジェネティクス法により一つずつの変異を持った組換えウイルスを作製し、MDCK細胞でのウイルス増殖能を測定し、初代ウイルスの増殖能が増強されるかを検討する。初代ウイルスの増殖能を増強させるアミノ酸変異が同定された場合、逆に、変異ウイルスのアミノ酸を、初代ウイルスのアミノ酸に置換させた組換えウイルスを作製し、変異ウイルスの増殖能の増強が抑制されるかを検討する。以上の方法により、ウイルス増殖能の増強に関与するアミノ酸変異部分を決定する。 ここまでの研究によって明らかとなったアミノ酸変異による増殖能の増強のメカニズムを解析する。即ち、増殖能を高めるアミノ酸変異について、ウイルスタンパクの機能変化の観点から解析を行う。 HAの変異が増殖に関与することが示された場合には、リセプターであるシアル酸との結合強度、ウイルス増殖の初期における増殖能および、アポトーシス誘導能の相違について検討を行う。NAの変異が増殖に関与することが示された場合には、Neuraminidase活性を測定し、ウイルス放出能の相違について検討を行う。RNA polymerase(PB1, PB2, PA, NP)の変異が増殖に関与することが示された場合には、RNA polymerase活性を測定し、ウイルスゲノム、mRNAの各合成能の相違について検討を行う。その他の分節(M, NS)の変異が増殖に関与することが示された場合には、ウイルス増殖のどのステップが影響を受けているかを解析し、そのメカニズムを明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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