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2013 年度 実施状況報告書

鳥インフルエンザウイルスの増殖能を決定するアミノ酸変異の解析

研究課題

研究課題/領域番号 24580441
研究機関独立行政法人医薬基盤研究所

研究代表者

山田 博司  独立行政法人医薬基盤研究所, 創薬基盤研究部, 研究員 (30343304)

研究分担者 岡本 成史  独立行政法人医薬基盤研究所, 創薬基盤研究部, 研究員 (50311759)
キーワード鳥インフルエンザウイルス / 増殖能
研究概要

鳥由来のインフルエンザウイルスを、MDCK細胞で高い増殖能を有するワクチン用の種ウイルスにするための目的で、初代培養株と30代以上の継代株で100倍以上も増殖能に差のある3種類のウイルス株を得た。
初年度、これらの3種類の鳥インフルエンザウイルスについて、全塩基配列を決定した。次に、初代ウイルスの8本のゲノム分節のうち、1分節のみを高い増殖能を獲得した変異ウイルス由来の分節に置換したリアソータントを作製し、増殖能を検討したところ、PB2分節とHA分節を入れ替えたリアソータントについて、MDCK細胞における増殖能が増強した。逆に、変異ウイルスの8本のゲノム分節のうち、1分節のみを初代ウイルス由来の分節に置換したリアソータントを作製し、増殖能を検討したところ、H8N4, H10N2, H12N5型の3種類全てで、PB2分節とHA分節を入れ替えたリアソータントについて、MDCK細胞における増殖能が減少した。PB2分節について塩基配列を決定したところ、627番目のグルタミン酸がリシンに変異していた。HA分節についても、いくつかのアミノ酸変異を同定した。
昨年度は、PB2とHA分節において、変異ウイルスと初代ウイルスとの比較によって明らかとなった全てのアミノ酸変異について、リバースジェネティクス法により一つずつの変異を持った組換えウイルスを作製し、MDCK細胞でのウイルス増殖能を測定した。PB2のE627K変異については、H8N4, H10N2, H12N5型の3種類全てで、初代ウイルスの増殖能が増強された。HAについては、H8N4, H10N2, H12N5型の3種で、計9個の変異が確認でき、そのうちの4個のアミノ酸変異が初代ウイルスの増殖能を高めた。これらの変異のうちの3個はHA2領域にあり、ウイルスの細胞内侵入後の膜融合活性を高めることを確認した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

初代ウイルスの8本のゲノム分節のうち、1分節のみを高い増殖能を獲得した変異ウイルス由来の分節に置換したリアソータントを作製し、増殖能を検討したところ、H8N4, H10N2, H12N5型の3種類全てで、PB2分節とHA分節を入れ替えたリアソータントについて、MDCK細胞における増殖能が増強した。逆に、変異ウイルスの8本のゲノム分節のうち、1分節のみを初代ウイルス由来の分節に置換したリアソータントを作製し、増殖能を検討したところ、H8N4, H10N2, H12N5型の3種類全てで、PB2分節とHA分節を入れ替えたリアソータントについて、MDCK細胞における増殖能が減少した。よって、H8N4, H10N2, H12N5型の3種類全てで、PB2分節とHA分節が増殖能に関係する遺伝子であることが明らかとなった。PB2分節について塩基配列を決定したところ、627番目のグルタミン酸がリシンに変異していた。HA分節については、9個のアミノ酸変異が見つかり、初代ウイルスのHAに組み込むと、4個のアミノ酸変異が初代ウイルスの増殖能を高めた。3個のアミノ酸変異はHA2領域にあり、ウイルスの細胞内侵入後の膜融合活性を高めることを確認した。このように、PB2, HA分節について、10個のアミノ酸変異を同定し、そのうちの5個について、増殖能が高める変異であることを明らかとすることができ、おおむね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

変異ウイルスと初代ウイルスとの比較によって明らかとなった全てのアミノ酸変異について、初代ウイルスの遺伝子に点変異を加えることによって変異ウイルスのアミノ酸変異部分が反映されるようにする。次いでリバースジェネティクス法により一つずつの変異を持った組換えウイルスを作製し、MDCK細胞でのウイルス増殖能を測定し、初代ウイルスの増殖能が増強されるかを検討する。初代ウイルスの増殖能を増強させるアミノ酸変異が同定された場合、逆に、変異ウイルスのアミノ酸を、初代ウイルスのアミノ酸に置換させた組換えウイルスを作製し、変異ウイルスの増殖能の増強が抑制されるかを検討する。以上の方法により、ウイルス増殖能の増強に関与するアミノ酸変異部分を決定する。
ここまでの研究によって明らかとなったアミノ酸変異による増殖能の増強のメカニズムを解析する。即ち、増殖能を高めるアミノ酸変異について、ウイルスタンパクの機能変化の観点から解析を行う。
H8N4, H10N2, H12N5の3種類のトリインフルエンザウイルスのMDCK細胞での高い増殖能を決定づけるアミノ酸変異が、他の鳥インフルエンザウイルス亜型においても有効であるかを検討する。そのために、同定したアミノ酸変異を他のトリインフルエンザウイルスに導入した変異ウイルスを作製し、MDCK細胞での増殖能にどのような影響を示すのかを検討する。

次年度の研究費の使用計画

今年度の3月に物品を購入した分について、支払いが次年度の4月になったため、次年度使用額が生じた。今年度の3月に購入した物品により、実質的には、今年度の交付決定額を使いきった。
今年度の3月に物品を購入した分について、支払いが次年度の4月になったため、次年度使用額が生じた。今年度の3月に購入した物品により、実質的には、今年度の交付決定額を使いきったので、使用計画に影響は出ず、次年度も予定通りに使用する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2013

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] An MDCK cell culture-derived formalin-inactivated influenza virus whole-virion vaccine from an influenza virus library confers cross-protective immunity by intranasal administration in mice2013

    • 著者名/発表者名
      Haredy AM, Takenaka N, Yamada H, Sakoda Y, Okamatsu M, Yamamoto N, Omasa T, Ohtake H, Mori Y, Kida H, Yamanishi K,Okamoto S
    • 雑誌名

      Clinical and Vaccine Immunology

      巻: 20 ページ: 998-1007

    • DOI

      10.1128/CVI.00024-13

    • 査読あり
  • [学会発表] Dextran sulfate によるインフルエンザウイルス増殖の阻害とNA活性抑制との関連性2013

    • 著者名/発表者名
      山田博司、Ahmad M. Haredy、森康子、山西弘一、岡本成史
    • 学会等名
      第61回日本ウイルス学会学術集会
    • 発表場所
      兵庫県神戸市
    • 年月日
      20131110-20131112
  • [学会発表] NA subtype impact on influenza intranasal inactivated whole virion vaccine2013

    • 著者名/発表者名
      Ahmad M. Haredy、山田博司、迫田義博、森 康子、喜田 宏、山西弘一、岡本成史
    • 学会等名
      第61回日本ウイルス学会学術集会
    • 発表場所
      兵庫県神戸市
    • 年月日
      20131110-20131112
  • [学会発表] Dextran sulfate による PR8 NA の機能阻害の解析2013

    • 著者名/発表者名
      山田博司、Ahmad M. Haredy、森康子、山西弘一、岡本成史
    • 学会等名
      第27回インフルエンザ研究者交流の会シンポジウム
    • 発表場所
      北海道札幌市
    • 年月日
      20130628-20130630
  • [学会発表] Impact of heterologus NA on inactivated whole virion vaccine2013

    • 著者名/発表者名
      Ahmad M. Haredy、山田博司、迫田義博、森 康子、喜田 宏、山西弘一、岡本成史
    • 学会等名
      第27回インフルエンザ研究者交流の会シンポジウム
    • 発表場所
      北海道札幌市
    • 年月日
      20130628-20130630

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公開日: 2015-05-28  

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