研究実績の概要 |
鳥由来のインフルエンザウイルスH8N4, H10N2, H12N5型を、MDCK細胞で高い増殖能を有するワクチン用の種ウイルスにするための目的で、初代培養株と30代以上の継代株で100倍以上も増殖能に差のある3種類の変異ウイルス株を得た。 初めに、これらの3種類の鳥インフルエンザウイルスについて、初代ウイルスと変異ウイルスの全塩基配列を決定した。次に、初代ウイルスの8本のゲノム分節のうち、1分節のみを高い増殖能を獲得した変異ウイルス由来の分節に置換したリアソータントを作製し、増殖能を検討したところ、H8N4, H10N2, H12N5型の3種類全てで、PB2分節とHA分節を入れ替えたリアソータントについて、MDCK細胞における増殖能が増強した。逆に、変異ウイルスの8本のゲノム分節のうち、1分節のみを初代ウイルス由来の分節に置換したリアソータントを作製し、増殖能を検討したところ、3種類全てで、PB2分節とHA分節を入れ替えたリアソータントについて、MDCK細胞における増殖能が減少した。PB2分節について塩基配列を決定したところ、627番目のグルタミン酸がリシンに変異していた。HA分節についても、数個のアミノ酸変異を同定した。 次に、H8N4, H10N2, H12N5型の3種類全てについて、PB2とHA分節において、変異ウイルスと初代ウイルスとの比較によって明らかとなった全てのアミノ酸変異について、リバースジェネティクス法により一つずつの変異を持った組換えウイルスを作製し、MDCK細胞でのウイルス増殖能を測定した。PB2のE627K変異については、H8N4, H10N2, H12N5型の3種類全てで、初代ウイルスの増殖能が増強された。HAについては、H8N4, H10N2, H12N5型の3種で、計9個の変異が確認でき、そのうちの4個のアミノ酸変異が初代ウイルスの増殖能を高めた。これらの変異のうちの3個はHA2領域にあり、ウイルスの細胞内侵入後の膜融合活性を高めることを確認した。
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