研究課題/領域番号 |
24580442
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大塚 弥生 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 客員研究員 (30396303)
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研究分担者 |
佐藤 耕太 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 准教授 (50283974)
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キーワード | ボルナ病 |
研究概要 |
ボルナ病ウイルス(Borna disease virus; BDV)は本来、馬の急性脳炎の原因ウイルスとして同定されたが、未だにその実態はよく分かっていない。本研究は、BDVの感染経路の解明のため、受容体分子の同定を目指す研究である。25年度には、リコンビナントウイルスができかった原因を突き止めるために、BDVGの発現量に関して研究した。近年単離された鳥ボルナ病ウイルス(ABV)のエンベロープタンパク質の発現を同様に解析した。具体的にはBDVG、ABVGならびにこれらの各種変異体を培養細胞に発現させ、その生合成と小胞体品質管理、細胞内輸送と細胞膜発現を比較・解析し、これらのウイルス膜蛋白質の効率的細胞膜発現(あるいは低発現)に重要な構造領域の特定を試みた。BDVG野生型は培養細胞における発現量が著しく低く、解析が困難であった。BDVGとABVGは類似した構造をもつが、ABVGはBDVGと比べ発現量が多く、細胞膜における発現が容易に観察でき、また高い細胞融合活性を持っていた。BDVGとABVGのキメラ変異体を用いて、細胞内発現と局在を比較したところ、BDVGの膜貫通領域にその発現量を決定する構造が存在し、とくにBDVGの483SLCV486配列を、ABVG膜貫通領域の相当する配列480QLVM483に変換した置換体は、BDVG野生型と比較して発現が高レベルであった。BDVは感染した動物体内でウイルス粒子の形成が極めて低いことが以前より知られている。しかしその原因は分かっていない。このことから、BDVG蛋白質発現の低効率が、ウイルス粒子の形成の低さと関係していることが推測され、本研究成果はその真相を捉えていると示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度にリコンビナントウイルスの作成が困難を極めたため、リコンビナントウイルスを用いた感染実験による受容体分子の検索ができなかった。しかしそのことがBDVGの発現効率の悪さを見いだす上で重要な発見となった。 よって26年度の研究では予定を変更し、BDVGの発現に関与する宿主因子を探索することにする。
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今後の研究の推進方策 |
ボルナ病ウイルス(BDV)は感染細胞においてウイルス粒子が検出できないことが知られている。初年度および次年度の研究から、その原因の一つとしてBDVエンベロープタンパク質(BDVG)の細胞内発現量の著しい低さが関係していることが示唆された。その結果を受け、27年度はBDVGのタンパク質発現に関わる宿主因子を探索する。具体的には、近年単離された鳥ボルナ病ウイルス(ABV)のエンベロープタンパク質(ABVG)を比較対象として用い、細胞内発現時のRNA発現およびタンパク質発現をNorthern BlottingおよびWestern Blotting法にて解析する。続いてRNA転写~翻訳~膜発現に関わる細胞内因子を共発現させ、BDVGおよびABVGの発現を同様に解析し、BDVG発現を左右する因子を同定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
最終年度の研究助成金として、交付初年度より計画されていた。 近年単離された鳥ボルナ病ウイルス(ABV)のエンベロープタンパク質(ABVG)を比較対象として用い、細胞内発現時のRNA発現およびタンパク質発現をNorthern BlottingおよびWestern Blotting法にて解析する。続いてRNA転写~翻訳~膜発現に関わる細胞内因子を共発現させ、BDVGおよびABVGの発現を同様に解析し、BDVG発現を左右する因子を同定する。 同定したBDVG発現に影響を及ぼす細胞内因子についてさらに検討を行い、BDVウイルス複製・増殖について基礎的研究をおこなう。同定した宿主因子をBHK細胞およびVero E6細胞に安定発現または強制発現させ、再度リコンビナントウイルスの作製を試みる。またVero E6細胞由来cDNA導入CHO-K1細胞感染スクリーニング系の作製も引き続き行い、BDV感染に関わる宿主受容体の探索に繋げていく計画である。
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