ボルナ病ウイルス(Borna disease virus; BDV)は人獣共通感染症として危惧されているが、実態は不明である。BDV感染動物体内でのウイルス粒子の数は極めて少ないが、これまでの研究よりその原因としてウイルスエンベロープタンパク質(BDVG)の発現効率が関与していることが予想される。本研究ではBDVGの発現に関わる宿主因子の探索を行っており、本年度は宿主スプライシング因子との関連を調査した。ウイルスRNAのプロセシングでは、宿主細胞のRNA結合蛋白質は不可欠な存在であり、hetetogenous nuclear ribonucleoproteins (hnRNPs) は選択的スプライシングの中心的役割を担っている。一方、恒常的スプライシングの際、U2 auxiliary factor 65 (U2AF65)がポリピリミジントラクト(PPT)に結合し、BPへのU2 small nuclear ribonucleoprotein particle (snRNP)の結合を誘導する。hnRNPsの一つであるポリピリミジントラクト結合タンパク(PTB1) はPPTへの結合に際しU2AF65と競合して、恒常的スプライシングを抑制する。本研究ではこれらの二つの因子の影響を調べるために、Mycタグを付加したU2AF 65とPTB1の発現ベクターを構築し、BDVGと共に293T細胞に共発現させ、mRNAレベルを解析した。その結果、U2AF65が濃度依存性にBDVGの発現を増加させた。以上より、BDVGの発現には恒常的スプライシング因子であるU2AF 65が関与することが示唆された。
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