研究課題
Campylobacter属菌の鶏と体皮膚への付着のメカニズムは不明であり、その研究も進んでいないのが現状である。考えられる付着のメカニズムの要因として、Campylobacter 属菌の菌体側の要因、宿主の鶏皮膚の要因、環境要因などが挙げられる。これまでの研究成果から、と体皮膚のアルカリ抽出物中にCampylobacter属菌と付着する100~150kDaの因子が含まれるが、酸抽出物中には付着因子が検出されないことが判明したことから、両者の蛋白の差異を解析することにより、付着に関与する宿主側の因子を究明した。ブロイラーの中抜きと体の背部から25cm2の皮膚を採取し、直径3cmの円筒の底部に貼りつけて固定した。これに0.01M 塩酸(pH2.0)または01.M 水酸化ナトリウム (pH13.0)を添加し、室温で30分静置して皮膚表層の抽出液を回収し、中和後に濃縮した抽出液の二次元電気泳動による解析を実施した。酸またはアルカリ抽出液中のタンパク質を蛍光標識してから二次元電気泳動を行い、それぞれのサンプルのスポットの違いを解析したところ、全体で700以上のスポットに違いが認められた。このうち、100~150kDaのタンパク質で、かつ、アルカリ処理液中のタンパク質が酸処理液中のタンパク質の発光量の2倍以上を示す、2スポットが検出された。MALDI-TOF-MSを用いたペプチドマスフィンガープリント(PMF)法により2スポットのタンパク質の同定を試みたが、鶏のタンパク質に関するデータベースが完備されていなかったため同定には至らなかった。同定できた他のタンパク質との比較から、この2スポットのタンパク質の等電点は約6.85、8.31であると推定された。
2: おおむね順調に進展している
食鳥処理工程でカンピロバクターが食鳥と体皮膚を汚染するメカニズムを明らかにする研究で、細菌および食鳥側の主要な付着因子を明らかにすることができており、効果的な微生物制御法の開発につながる成果が得られている。
食鳥処理では、湯漬け、予備冷却、チラーなど、工程により温度が大きく異なる。そこで、今後は温度やpH等の環境要因が皮膚への付着にどのような影響を及ぼすのか明らかにする。カンピロバクターの食鳥と体皮膚への付着機序を明らかにした上で、その基礎的な知見をこれまで開発してきたマイクロバブルや共振超音波処理等の食鳥と体の微生物制御技術にフィードバックし、さらに効果的な殺菌法の開発を行う。
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