研究課題
カンピロバクター食中毒は国内で最も発生件数の高い細菌性食中毒として重要視されており、その主要な感染源の一つに食鳥肉が挙げられる。しかしながら、食鳥と体表面への付着機序についてはほとんど明らかにされていない。そこで本研究では、鶏皮膚に対する本菌の付着因子を細菌側および食鳥側から明らかにすることを目的とした。細菌側の付着因子を検索するため、Campylobacter jejuniの野生株(81-176)から遺伝子改変技術を用いて菌体表層に発現している鞭毛、莢膜、リン脂質およびPEB1外膜蛋白質の欠損株をそれぞれ作出し、鶏皮膚への付着菌数を定量的に測定した。その結果、莢膜が鶏皮膚への付着因子として重要な役割を担っていることが示唆された。しかしながら、接種菌数が高いと莢膜の有無に関わらず付着能の差は認められなかったことから、菌体には複数の付着因子が存在することが示唆された。次に、食鳥側の付着因子を検索するため、皮膚のアルカリおよび酸処理が菌の付着に及ぼす影響を調べた。その結果、NaOHを用いた鶏皮膚の前処理によって、鶏皮膚に付着するC. jejuniの菌数が約1/10に減少した。一方塩酸処理では、未処理の場合と比較して付着菌数に有意差は認められなかった。よって皮膚のアルカリ処理抽出画分中にカンピロバクターの付着因子が含まれていると考え、アルカリ処理抽出画分をSDS-PAGE電気泳動した後にニトロセルロース膜に転写し、オーバーレイアッセイによる菌体蛋白画分との結合試験を行った。その結果、皮膚アルカリ処理抽出画分中の100~150kDa付近に結合するバンドが検出された。2次元電気泳動では、等電点が約6.85と8.31の2種類の蛋白が検出され、MALDI-TOF-MSを用いたペプチドマスフィンガープリント法によりタンパク質の同定を試みたが、鶏のタンパク質に関するデータベースが完備されていなかったため同定には至らなかった。
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