研究課題/領域番号 |
24580448
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
後藤 義孝 宮崎大学, 農学部, 教授 (30142136)
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研究分担者 |
芳賀 猛 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (20315360)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 抗酸菌症 / 豚 / マウス / サイトカイン / 診断法 |
研究概要 |
マウス感染モデル(C57BL/6)を用いて、防御機構の破綻から発病に至る機序と、防御機構の発動により発症を免れる機序の両方を肉芽腫性病変の変化と感染宿主が産生するサイトカインプロファイルを調べた。タンパクレベルにおけるサイトカイン測定はELISAによる免疫定量法によりおこない、また遺伝子レベルではRNA(mRNA)を抽出し、リアルタイムPCR(RT-PCR)による分子遺伝学的定量法の開発をおこなった。ELISAによる免疫定量法では抗原(菌体)刺激によって、TNF、IFN-、IL-12/IL-23 p40が培養上清中に多量に産生された。IL-10は、抗原刺激の有無に関らず産生され、刺激による産生量の増加は見られなかった。リアルタイムPCR法によるサイトカインmRNAの発現量の測定では抗原刺激によるINF-、TNF- 、IP-10の増加とMCP-1の抑制がみられた。次に豚の脾細胞をin vitroで抗原刺激した場合に産生されるサイトカインについて検討した。健常例豚では、脾細胞中のマクロファージや抗原提示細胞によるIL-12/IL-23 p40の産生がみられた。NTM以外の細菌感染症豚では、IL-12/IL-23 p40に加えてTNF-α、IL-10の産生がみられた。抗酸菌症例豚ではさらに、IFN-g、IL-17Aが抗原特異的に産生された。また、IL-12/IL-23 p40とIL-10の産生量が健常豚やNTM以外の細菌感染症豚より多く、抗酸菌症の豚では細胞性免疫の活性化が強く起こっていると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、①マウスの感染モデルを用いてサイトカインの定量法を確立すること、②産生されるサイトカインの種類について感染症診断に有用なサイトカインを選出すること、③感染臓器からの抗酸菌検出法の改良を行うことにより、迅速診断法の開発への手がかりを得ることを目的とした。①についてはELISAによるタンパク定量法に加えてリアルタイムPCRによる定量法の開発に取り組み、所期の目的とした18種のサイトカインのうち16種類はいずれかの方法で定量できる体制を整えた。②についてはモデルマウス(C57BL/6)と抗酸菌(M.avium subsp. hominissuis)に自然感染した豚を用いて、診断に有用なサイトカインが少なくとも5種類は存在することを見出した。②の研究を遂行する過程で我々は抗酸菌を迅速に同定するための遺伝子検査法の開発を進めた。その結果、臓器乳剤中に含まれる菌数が比較的多ければそれらを材料として菌種の特定が可能となるPCR法(改良法)を考案した。③についてはまだ改良の余地があるが、これら全体の成果からみて概ね順調に進展していると思われる
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今後の研究の推進方策 |
抗酸菌感染マウスにおける病態解析を引き続き行う。感受性マウスと抵抗性マウスにおける肉芽腫病変形成と産生されるサイトカインの関係をタンパクレベルならびに遺伝子レベルで解析する。さらにそれらの知見をもとに、豚の抗酸菌感染症例(野外例)を用いて、様々な感染ステージにある患畜の免疫プロファイルから予後判定を行うために必要なサイトカインの特定を試みる。これと平行して、野外材料からの迅速抗酸菌検出法の改良と実用化に取り組む。豚を用いた研究は宮崎県下の食肉検査所と連携し、症例の摘発ならびに検体を集める計画を立てている。また、同一サンプル(脾臓とリンパ節)を用いて、感染個体の免疫学的特性を詳細に調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費1,300,000円のうち、約7割を遺伝子解析ならびにサイトカイン等タンパク検出のためのキット、それらに必要なプラスティック器具などの消耗品とマウスならびに飼料の購入に充てる。また2割を食肉検査所からの検体搬入のための交通費や獣医学会等における成果発表のための交通費に充てる。残りは論文作成に関る資料収集費や印刷費の一部とする。
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