研究課題/領域番号 |
24580448
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
後藤 義孝 宮崎大学, 農学部, 教授 (30142136)
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研究分担者 |
芳賀 猛 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (20315360)
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キーワード | 抗酸菌症 / 豚 / マウス / Mycobacterium avium / 遺伝子解析 / 診断 |
研究概要 |
マウスの感染モデルと豚の自然感染(野外)例を用いて、①抗酸菌症の予後診断に有用なサイトカインの探索を行うと同時に、②豚農場における抗酸菌症拡大の要因をしらべた。①についてはELISAによるタンパク定量法に加えてリアルタイムPCRによる定量法により、IFNγやTNFαなどのサイトカインに加え、MCP‐1やIP‐10などのケモカインについてその動態(マウス)と病気の重症度との関係(マウスと豚)について解析し、TNFαが肉芽腫の形成と維持に必須であること、マウスの抗酸菌感染症増悪モデルと豚抗酸菌症においてIFNγならびにIP-10の動態の類似性を確認した。②については病気が蔓延している農場の豚からM.aviumを分離し、それらの遺伝子型をMIRU-VNTR法により調べ、特定の遺伝子型をもつ有病原性株が豚から豚へと感染拡大を起こしているというよりも、病原性の異なる多様な遺伝子型が敷料や飲み水などから農場に侵入し、感染を広げていることを明らかにした。また豚抗酸菌症の菌種同定を含めた迅速診断法については、感染臓器から直接菌体DNAを抽出、hsp65を標的遺伝子としたnested PCRにより、分離菌数102cfu/g以下という少ない菌数でも検出が可能となるよう工夫を行い、実用化に向けての取り組みを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
感染臓器内のM.aviumは一般の病原細菌に比べDNAが抽出しにくく、検出感度を高めるための方策として、①病巣部からの細菌DNAの抽出法の改良、②標的遺伝子の工夫、③nested PCRなど検出感度の向上の3点を踏まえた研究を実施した。その結果、DNeasy Blood&Tissue Kitを用いた抽出法と16SrRNA遺伝子とhsp65遺伝子をPCRの標的遺伝子として用い、さらにnested PCRを行うことにより、豚抗酸菌症の検査対象となるリンパ節では、菌分離が困難な材料でも遺伝子の検出ができるよう工夫を行った。さらに感染動物の予後診断に向けての研究では、サイトカインプロファイリング抗酸菌に感染した豚(野外例)における複数のサイトカインを遺伝子レベルとタンパクレベルで調べ、それらの相関を調べるとともに実験的にマウスにM.aviumを感染させた際の病態解析を進め、TNFαが肉芽腫の形成と維持に必須であること、IFNγならびにいくつかのケモカインの動態を調べ、抗酸菌感染症増悪モデルにおけるサイトカインプロファイルを作成することができた。以上のことから当該年度の本研究の目的を概ね達成していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、免疫誘導から防御機構の発動までのプロセスと破綻に至るプロセスにおける免疫担当細胞の量的あるいは質的差が、それに付随するサイトカインの量的ならびに質的差が宿主の予後を左右する重要な決め手となると考えられる。今年度は、将来の臨床応用を考えて、マウスを用いた病態増悪モデルと治癒モデルにおいてさまざまな感染ステージにおけるサイトカインおよびケモカインのプロファイルと病理組織像の解析(浸潤細胞の量的・質的差異)から感染の予後診断の可能性を追究する。さらに25年度に引き続き、宮崎県下の食肉検査所と連携し、野外材料からの迅速抗酸菌検出法の改良と実用化に取り組み、農場内における抗酸菌拡大要因の解明を進めるとともに病気の進行(または退行)を予測するための新たな診断法を確立する。この研究手法は抗酸菌感染症のみならず、多くの病原微生物感染症において応用が可能であり、将来的には感染症の診断への応用のみならず治療法の開発や評価などの臨床応用への可能性を追究したい
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