豚の抗酸菌症はMycobacterium avium subsp. hominissuis(MAH)を主な原因とする慢性肉芽種性疾病で、全国で発生がみられる。最終年度は、豚の抗酸菌症における免疫とりわけサイトカインのプロファイルを抗酸菌症以外の症例や健常豚のそれらと比較し、病理組織像と併せてその特徴を調べ、診断への応用の可能性について検討した。 宮崎県の食肉処理場に搬入された豚(交雑種)のうち、肉眼的に抗酸菌症と診断したものをMI群、抗酸菌症とその他の細菌感染症併発例をCI群、抗酸菌以外の細菌感染症例をOI群、健常豚をN群とし、各群の豚の脾臓を採取、RPMI1640培養液にて脾細胞浮遊液を作成、MAH Mino株による抗原刺激を行って、細胞培養上清中に産生されるサイトカイン量をELISA法により定量した。 MI群はIL-12/IL-23 p40のほかINF-γとTNF-αを、またCI群とOI群はTNF-αをそれぞれ有意に産生した。このことから、マウスでの実験結果と同じく、MI群では抗原(MAH)に特異的な免疫T細胞集団が誘導されていることを強く示唆している。一方、TNF-αはMAH非特異的刺激に細胞(多分活性化されたマクロファージ)から産生されていると推察された。MI群におけるINF-γとTNF-αの産生には高い正の相関がみられ、MCP-1とINF-γ、MCP-1とTNF-αの間には負の相関がみられた。IL-12/IL-23 p40産生量が多い個体には初期病変のものが多く、慢性化もしくは石灰化の著しい病変をもつ個体では産生量が低い傾向がみられた。こうしたサイトカインプロファイルの変化は、局所病変(肉芽腫形成とその慢性化)と関連しており、豚抗酸菌症における感染診断の一助となり得るのではないかと思われる。
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