研究課題/領域番号 |
24580449
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
向本 雅郁 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (80231629)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 細菌毒素 / 腸炎 / ニワトリ / 感染症 |
研究概要 |
NetBに対する感受性の動物種差を明らかにするため、10種類の鳥類と6種類の哺乳動物の赤血球を用いて、溶血試験を実施し、50%溶血量(HU50) を算出した。鳥類赤血球ではキジ目であるニワトリとホロホロ鳥の2種で高い感受性を示し、鳥類のなかで最大100倍程度の感受性の差がみられた。哺乳動物赤血球の感受性はニワトリと比較して1/100前後と低かった。 株化細胞を用いた細胞傷害試験でニワトリ肝臓由来細胞(LMH)と10種類の哺乳動物由来細胞の50%細胞致死量(EC50)を算出した。LMH細胞では著しく高い感受性を示し(0.63μg/ml)、哺乳動物由来株化細胞ではほとんど感受性を示さなかった。以上の結果からNetBの細胞傷害作用は種特異性が高く、特にニワトリの感受性が高いことが明らかとなった。 細胞膜上のNetBに結合する分子を特定するため、ニワトリ赤血球ゴーストを界面活性剤で処理し、可溶画分と不溶画分に分けた後、SDS-PAGEおよびPVDF膜に転写し、Toxin overlay assayを行った。界面活性剤としてNP-40とTriton X-114を用いたときに可溶性画分の100kDa付近にNetBと結合するバンドが検出され、NetB受容体である可能性が示唆された。単層培養したLMH細胞にNetBを反応させた後、細胞を界面活性剤で処理し、可溶性画分と不溶性画分に分け、イムノブロッティングによりNetBがLMH細胞上でオリゴマーを形成していることを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NetB受容体およびオリゴマー形成に関与する細胞膜上の領域の特定については、LMH細胞を用いたToxin overlay assayにより細胞をNP40で可溶化したときの可溶性画分にNetBと結合する分子を発見したことから、本分子がNetBの受容体である可能性が高く、来年度、この結合分子を単離し、質量分析等を実施することで、受容体を特定できると考えている。オリゴマー形成に関与する領域の特定についてはLMH細胞にNetBを添加し、可溶化後、イムノブロッティングによりオリゴマー形成を確認する系を確立することができたので、この系を用いて細胞膜上の様々な分子の除去や阻害剤を用いて、オリゴマー形成の細胞膜上のメカニズムを解明していく。 NetBの受容体結合領域の特定に関しては現在、ホルマリンでトキソイド化したNetBをマウスに免疫し、モノクローナル抗体作製に取り掛かっている。来年度にはNetBを中和するクローンを選別し、組換えNetBの欠損変異体を用いて受容体結合に関与するNetB分子側の領域を特定できると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
①NetB受容体の特定:赤血球や株化細胞を用いた感受性試験でニワトリが特に高い感受性を示したことから、NetB受容体の種特異性が高いと考えられる。NP40で可溶化したニワトリ由来細胞で可溶性画分において100kDa付近にNetBと結合する分子が確認されたことから、結合分子は蛋白を含む可能性が高く、ニワトリ特異的なアミノ酸配列を有していると考えられる。そこで、2次元電気泳動等によりさらに詳細に細胞膜成分よりNetB結合分子を分離し、質量分析法等により結合分子を特定する。細胞膜上の蛋白以外の分子との結合の可能性も考慮して、簿層クロマトグラフィーを用いて、リン脂質やGPIアンカー蛋白との結合についても調べる。 ②NetB分子上の毒素活性に関与する領域の特定:NetBに対して中和活性を有するモノクローナル抗体を作製する。エピトープマッピングや組換えNetB欠失変異体を用いて受容体に結合する領域やオリゴマー形成に関与する領域を特定する。 ③国内で飼育されている家きんから分離したNetB陽性C. perfringensの疫学的解析:報告者らはこれまで壊死性腸炎発症鶏だけでなく正常の鶏糞便からも多くのNetB遺伝子保有C. perfringensを分離してきた。本菌を保有していても必ず壊死性腸炎発症するわけではなく、飼料成分やコクシジウム感染等誘引物質が関与していると考えられている。そこで、様々な家きんより分離したNetB遺伝子保有菌のPFGEで系統解析し、マイクロアレイを用いてNetB遺伝子の発現状態や発現に関与する遺伝子を解析することにより、壊死性腸炎発症における菌体内でのNetB産生のメカニズムを解明する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
細菌培養用の培地、毒素精製用クロマトグラフィー用試薬、細胞培養用培地や牛胎児血清は本研究費より購入する。細胞側受容体の特定を行うため、酵素や結合阻害剤等を用いて細胞膜上に存在する蛋白、脂質、糖などを含む様々な分子を処理する。その際に使用する酵素や阻害剤の購入を考えている。分子の特定は質量分析法で行うため、分析に掛かる費用も支出する。NetB分子上の機能的解析を行うためのモノクローナル抗体作製やその後の無血清培地での大量産生および精製も本研究費を充当する。系統解析のためのマイクロアレイは外注を予定している。 次年度は国内および海外の学会で発表を予定しているため、出張旅費を計上する。また、学術論文への投稿料も計上する。
|