研究課題/領域番号 |
24580449
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
向本 雅郁 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (80231629)
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キーワード | 細菌毒素 / 腸炎 / ニワトリ / 感染症 |
研究概要 |
①我が国で分離されたNetB産生菌の系統解析:NetB遺伝子(netB)は接合性プラスミド上に存在するため、異なる株間で比較的容易に水平伝搬が起ると考えられる。C. perfringensは鶏腸管内の常在菌であるため、単一農場内にも複数の菌株が存在する。そこで、netB保有菌の多様性をPFGE法による系統解析により調べた。同一農場で分離されたnetBを保有する4株は同一の型に分類された。一方、netBを保有しない同一農場株との相同性は低かった。異なる農場から分離されたnetB保有菌はすべて別の型に分類された。以上の結果から、netBを含む接合性プラスミドは容易に伝搬するものではなく、同一農場に定着しているnetB保有菌は単一あるいは少数であると考えられる。また、地域により異なるnetB保有菌が存在していることも明らかとなった。 ②細胞膜上のNetBの局在とコレステロールの関与:LMH細胞にNetBを反応させ、界面活性剤を用いて可溶化し、ショ糖密度勾配遠心にて分画後、抗NetB抗体を用いたイムノブロッティングによりNetBの細胞膜上での局在を解析した。モノマー分子および重合したオリゴマー分子は共に細胞膜上の非ラフト領域に存在し、オリゴマー化に細胞膜上のコレステロールの関与は見られなかった。このことから、NetBは細胞に結合後、膜の流動性と無関係に、非ラフト領域に留まり、重合しオリゴマーを形成することが示唆された。 ③NetB受容体の特定:LMH細胞を可溶化後、ショ糖密度勾配遠心により分画したのち、NetBのtoxin overlay assayにより、NetBが結合するLMH細胞膜上の分子の特定を行った。その結果、60, 53, 47, 40kDa付近の非ラフト画分に存在する分子がNetBと結合し、受容体である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
我が国におけるNetB産生菌の疫学的解析の中で、netB保有菌のPFGEによる系統解析による同一農場での分布と拡散様式については、本研究課題内で目標とした成果がほぼ得られた。薬剤感受性についての解析を残すのみとなっている。 NetBの毒性発現のための細胞膜上での分子動態解析については、細胞膜への結合後からオリゴマー形成までのメカニズムについてはほぼ解明した。応募時に予想していた細胞膜上の脂質特にコレステロールの関与が無いことが明らかとなった。このことは1つの大きな成果であるが、来年度において、特に受容体の特定に関して、応募時の「研究計画・方法」に記載した方法に多少の修正が加わることとなり、特定には至っていない。受容体への結合、オリゴマー形成、孔形成に関与するNetB分子上の領域の特定に関しては、NetBの欠失変異体の作製は終了しており、現在、モノクローナル抗体を作製中で、来年度にはNetB分子上の毒性発現に関わる領域が特定できるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
①我が国におけるnetB保有菌の疫学的解析と鶏以外の動物から分離されたC. perfringensにおけるnetB保有状況:netB保有および非保有株の薬剤感受性試験を実施することにより、今後の鶏壊死性腸炎の治療や予防、特に薬剤投与法についての新たな知見を提供する予定である。鶏以外の牛豚や展示動物の糞便からC. perfringensを分離し、netBの保有状況を調べる。 ②NetB分子上の毒素活性に関与する領域の特定:作製中であるNetBの細胞致死活性を中和するモノクローナル抗体とNetB欠失変異体を用いて中和に関与する領域を特定する。さらに、点変異体を作製することで、毒素活性に関連するアミノ酸を特定する。その領域が毒素活性のどの過程(受容体への結合、オリゴマー形成、孔形成等)に関わっているかを明らかにする。 ③NetB受容体の特定:NetBの細胞毒性発現は鳥類特に鶏由来の細胞に限定されていることから、鶏で特異的に発現している蛋白が受容体として関与していることが予想される。数種類の界面活性剤でLMH細胞を可溶化し、Toxin overlay assayによりNetBと結合する分子を選定後、LC/MS分析装置を用いて、目的の分子を特定する。別の方法として、LMH細胞のみ感受性細胞であることから、LMH細胞膜上に特異的な受容体が存在することが予想される。LMH細胞をマウスに免疫し、抗LMH抗体を作製する。抗LMH抗体を複数のNetB非感受性細胞で吸収する。吸収後、本抗体を用いてLMH細胞の1次元あるいは2次元電気移動による免疫ブロッティングとToxin overlay assayさらには本抗体を用いた中和試験によりNetBが結合するLMH細胞特異的分子を特定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
LC/MSを用いたNetB受容体の特定が当該年度内に実施できなかったため、その経費を来年度に繰り越す。 疫学的解析のために使用する培地、感受性試験用抗生物質、PFGE様試薬等は本研究費より購入する。昨年度から継続しているNetB分子上の機能的解析をおこなうためのモノクローナル抗体作製やその後の無血清培地での大量生産および精製も本研究費から支出する。受容体を特定するため質量分析法(LC/MS)を用いるが、機器使用料および分析にかかる費用も支出する。 次年度は学会発表(札幌)を予定しており、出張旅費を計上する。また、学術論文への投稿料も計上する。
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