研究課題/領域番号 |
24580450
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
及川 伸 酪農学園大学, 獣医学群, 教授 (40295895)
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キーワード | 乳牛 / ケトーシス / 有病率 / リスク要因 / βヒドロキシ酢酸 / 非エステル型脂肪酸 |
研究概要 |
初年度の平成24年度は、乳牛群における2型SCKの発生実態を掴むため、現場で大規模な血液サンプリングを計画していたが、予定していたフィールドの研究協力者の転勤や組織改編のために計画どおりに進まず、年度途中で協力体制の再構築を行った。 それを受けて平成25年度は年度末までに北海道の11地区において、総計80戸を越える農場から約1,900検体の血液サンプル、検査データを得ることができた。前年度の採材と合わせて約2,500検体となり、数的には当初の計画を達成した。目下、年度を挟んで各地域からの調査データを集約中である。なお、分析可能であった道東地域のデータでは(537検体)、分娩初期牛のSCKの有病率は11.6%、乾乳牛では1.3%であった。なお、分娩初期のSCK警戒牛群の割合は61.9%と高かった。また、乾乳牛の低エネルギー有病率(NEFA濃度の異常割合)は11.6%と高かった。 本年度から実施予定の2型SCKの発生におけるリスク要因と病態評価については、当初数農場の対象を設ける予定であった。しかし、研究協力者から治療対象牛ではない臨床的に健康な牛に対して経時的な調査やサンプリングを継続することが日常の診療体制ではかなり難しいとの見解を受け、環境リスク要因に関しては、研究代表者が大学近郊の中核規模農場(経産牛約200頭)に定期的に訪問してデータを得た。その結果、分娩前に初産牛が経産牛と一緒の環境で飼養された場合、血中コルチゾール値が継続的に高値となり、ストレスを受けていることが示され、分娩後のSCK発生に関係することが推察された。一方、研究協力者には、SCKがその発生に関係する疾病(第四胃変位牛)に対して経時的な血液サンプルと病態調査を依頼しており、現在分析中である。さらに、副次的な結果として、第四胃変位発生には前病態として第四胃の萎縮性胃炎が関与している可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
協力体制を再度構築し、初年度の調査、サンプリングの遅れを取り戻したので、概ね順調に経過していると考えている。また、本年度から実施の課題(2型SCKの発生におけるリスク要因と病態評価)についても、『研究実績の概要』に記したとおり、現場の状況を判断しつつ、研究目的に沿った現実的に実施可能なフィールドスタディを計画、推進中である。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の平成26年度は、本試験の最終年度であるので、補足の調査と採材および分析を行い、データの総合評価を行う計画である。 1.SCKの有病率およびリスク調査:目下、データを集約中であり、今後データの精査、分析を行う計画である。その際に追加のサンプル採取や検査が必要になると考えられる。 2.SCK発生におけるリスク要因分析と病態評価:現在の調査を継続するともに、フィールドスタディとして現実的に調査可能な設定に多少アレンジを加える計画である。特に、病態把握では、より詳細な内容とするためにリポ蛋白質レベルで分析を検討予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
現場農場から採材されたサンプルを精査し、検査に不適切なサンプルが除外されたために予定よりも検査数が少なくなり、サンプル量によっては一部の検査項目しか実行できなかったため。 研究費の使用計画としては、本年度が最終年度であることから、補足の調査とサンプル分析を行い、データの総合評価のために海外の研究協力者への訪問等を計画している。すなわち、項目としては、血液検査関係(検査料、検査資材等)、出張旅費関係(現地打合せ、サンプリング、研究情報収集等)、データ分析関係(分析器、ソフト、資材等)、データ検討関係(海外出張、国内検討会費等)およびその他(論文作成等)である。
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