研究課題/領域番号 |
24580451
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
岡崎 克則 北海道医療大学, 薬学部, 教授 (90160663)
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研究分担者 |
大澤 宜明 北海道医療大学, 薬学部, 准教授 (20415558)
菅野 徹 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究所, 研究員 (80355205)
井上 恵美 北海道医療大学, 薬学部, 助教 (80433423)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 地方病性牛白血病 / 牛白血病ウイルス / 弱毒生ワクチン / RNaseH / 逆転写酵素 / ドミナント・ネガティブ効果 / Taxタンパク質 |
研究実績の概要 |
地方病性牛白血病は5~8歳のウシに好発する全身性リンパ肉腫であり、経済的に重要な疾病である。その原因である牛白血病ウイルス(BLV)は既に国内のウシ間に蔓延しているが、白血病の発症はウイルス感染牛の数%に限られる。しかしながら、近年その報告は急増して対策が急務となっていることから、平成24~25年度には感染牛の摘発・淘汰に応用可能な予後診断法を開発した。 本年度は地方病性牛白血病に対する弱毒生ワクチン株を開発するため、18歳で発症したウシで検出されたBLVの性状を解析した。ゲノム塩基配列の解析結果から、本ウイルスはRNaseH欠損逆転写酵素(RT)をコードするものと考えられた。BLV RTと性状の似たMoloneyマウス白血病ウイルスRNaseH欠損RTと野生型RTを用いた実験によって、RNaseH欠損RTはドミナント・ネガティブ効果を示すことが分った。即ち、RNaseH欠損RTをコードするBLVが野生型BLVと共感染するとその増殖を抑制する可能性が示された。野生型BLVの増殖抑制が白血病の発症を遅らせたものと考えられることから、白血病の発症予防(遅延)を目的としたワクチンとしてRNaseH欠損RTをコードするBLVゲノムクローンの作出を試みた。理化学研究所の間博士から分与を受けたBLV感染性クローンに変異を挿入して得られたプラスミドをBLV感受性細胞にトランスフェクトしたところ、多核細胞は形成するが感染は拡大しなかった。したがって、目的とするクローンは得られたと考えられるが、野生型BLVの増殖抑制効果は確認できていない。 BLVの転写活性化因子であるTaxタンパク質発現プラスミドで形質転換したラット株化細胞のゲノムには損傷が生じること、また、それらの細胞は軟寒天上でコロニーを形成することを示した。これらの成績は、本タンパク質が白血病発症に深く関与することを実証するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
BLVによる白血病発症機構の解明は想定以上に進展している。また、生ワクチン開発の準備段階は達成できた。一方、当初計画していたヒツジの感染実験は実施できていない。
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今後の研究の推進方策 |
RNaseH欠損RTをコードするBLVゲノムクローンから産生される欠損ウイルスの性状を精査し、地方病性牛白血病弱毒生ワクチンの候補株とする。 BLVによる白血病発症機構を解明するため、一連の変異Taxタンパク質を作出してヒトがん関連遺伝子への転写調節活性、形質転換細胞の軟寒天内コロニー形成能などを調べ、Taxタンパク質の構造-機能連関を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたヒツジの感染実験を実施しなかったため、その飼養費および付随する消耗品の購入がなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の研究計画に加え、Taxタンパク質の機能解析を進めるためにヌードマウスへの発現細胞移植実験を行う。 大学院生(2名)の学会発表(第63回日本ウイルス学会学術集会、福岡市)旅費に使用する。 あるいは、次年度以降の研究経費に目処がついた場合のみヒツジの購入費に充てる。
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