研究課題/領域番号 |
24580452
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
角田 勤 北里大学, 獣医学部, 准教授 (80317057)
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研究分担者 |
高井 伸二 北里大学, 獣医学部, 教授 (80137900)
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キーワード | カンピロバクター感染症 / 臓器移行 / 細胞侵入性 |
研究概要 |
昨年度の研究で、臓器移行・定着しなかった変異株のトランスポゾン挿入領域の決定を行ったが、それらの変異株35株中8株(22.9%)が鞭毛関連遺伝子であった。8株の内訳は、鞭毛遺伝子発現制御(fliA、flgR )、Basal body (flgG)、鞭毛蛋白糖鎖修飾(Cjj1340)、鞭毛フィラメント(flaA、flaB)、モーター /スイッチ (fliY、mobB)であった。これまでの研究から、C. jejuniの鞭毛は運動器官として菌にとって好適な部位へ移動するのに必要であるのみならず、非貪食系の細胞への侵入にも重要であることが知られている。今回見られた臓器移行能力の減少と細胞内侵入能力との関係を探るために、これまでに他の研究で作製されたトランスポゾンライブラリーの中から鞭毛関連遺伝子変異株を選別し、それらの変異株を加えて細胞接着性や侵入性をin vitroの培養系で調べた。その結果、鞭毛の運動制御系に関連するcheY、cheB、cheRのトランスポゾン挿入変異株では、cheYならびにcheR変異株が細胞への接着性と侵入性の亢進が観察されたがcheB変異株では逆にそれらが低下した。鞭毛の発現が見られなかったfliA、flgR、flgG、flaA変異株や運動性の無いfliY、mobB変異株では細胞の接着と侵入能力が著しく損なわれていた。一方、鞭毛発現と運動性に変化の無いCjj0996、fedA、fedB、fedC、fedD、fspA1、ciaI変異株では、Cjj0996、fedA、fedB、fspA1、ciaI変異株の細胞接着性や侵入性が低下していたが、fedCおよびfedD変異株は野生株と比べて遜色の無い細胞接着性や侵入性を示した。今後はこれらの性質がマウス体内での臓器移行能力に関連しているかを調べていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カンピロバクター菌がマウスに感染し臓器移行するためには鞭毛が重要な役割を担っていることが明らかとなったが、さらに詳細に解析すると鞭毛構造のみならずその糖鎖修飾や走化性も何らかのメカニズムで関与していることが明らかとなった。今回それらの変異と細胞侵入性との関連を検討することでき、得られた結果は今後細胞侵入性と臓器移行能力との関連を研究してくための基礎的なデータになるものと予測される。
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今後の研究の推進方策 |
1. 鞭毛変異株の血管侵入能力についての研究:マウスの実験感染においてカンピロバクター菌を経口あるいは腹腔内投与した場合、短時間に血液中に細菌が出現することが報告されている。マウス感染実験系における菌の血液内への移行能力と昨年度調べた各鞭毛関連遺伝子変異株の細胞侵入性との関連を調べる。 2. N結合型糖鎖修飾システムに変異が見られる菌株もまた臓器移行ができないことがこれまでの研究で明らかとなったが、これらの変異についてもin vitroでの細胞内侵入性やin vivoでの血管内移行能力を調べていく予定である。 3. スクリーングを継続することで感染/臓器移行に関与する新たな遺伝子を同定する。
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