研究課題
犬に感染する赤血球内寄生原虫であるBabesia gibsoniのheat shock protein 90 (hsp90)について、平成26年度は以下の研究を行った。1.B. gibsoniのhsp90(BgHsp90)が、原虫増殖に関係するかを観察するために、まず平成25年度に作成した抗BgHsp90抗体の培養液中への添加が原虫増殖に与える影響を観察したところ、原虫の増殖は変化せず、BgHsp90に対する抗体はBgHsp90を阻害しないことが明らかになった。このことから、BgHsp90は原虫の膜表面は存在しないことが示唆された。2.Hsp90阻害薬であるゲルダナマイシン(GA)と17-AAGを原虫培養液中に添加したところ、GA、17-AAGの両方により原虫の増殖は低下した。このことより、BgHsp90は原虫増殖に関与していることが示唆された。両者のうち、GAの方がより強い効果を発揮した。3.ストレス環境におけるBgHsp90の役割を明らかにするために、原虫培養液に過酸化水素を添加し、酸化ストレスをB. gibsoniに与えてBgHsp90の発現量の変化を観察したところ、その発現量は変化せず、酸化ストレスに対する応答においてはBgHsp90は関与しないことが予想された。3年の研究期間では、まずBgHsp90遺伝子のクローニングと塩基配列の解析に成功した。次にこの遺伝子情報を利用して組み替えBgHsp90蛋白質を作成し、これをさらに利用して抗BgHsp90抗体の作成を行い、免疫染色やウェスタンブロットなどの解析を行うことに成功した。この技術を用いて、原虫におけるBgHsp90発現プロファイルの解析が可能になり、ジミナゼン耐性B. gibsoniに於いてはその発現量が減少していること、活性酸素に曝された原虫ではその発現量は変化しないことが明らかになり、BgHsp90の機能の一端が明らかになった。また、BgHsp90を阻害することで原虫の増殖は抑制され、BgHsp90は原虫増殖に関与していることが明らかになった。
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Veterinary Parasitology
巻: 205 ページ: 424-433
http://dx.doi.org/10.1016/j.vetpar.2014.09.005