研究課題
肉牛および乳牛における子宮炎症度や細菌感染率の生理的な推移やそれらに及ぼす要因を明らかにする目的で、内膜スメア中の多形核白血球率(PMN%)の推移を観察、授乳形態の違いを比較した。黒毛和種経産牛計93頭とホルスタイン種経産牛8頭を供試、同一個体の分娩後2週(2W)から6週(6W)(黒毛和種)、あるいは3Wから9W(ホルスタイン種)で子宮内膜スメアを採取、PMN%を算出した。同時に子宮内膜からマイコプラズマおよび一般細菌の分離を試みた。なお黒毛和種牛では分娩後2~3カ月まで授乳を行う授乳群33頭と、分娩後早期に離乳させ人工哺育を行う早期離乳群60頭におけるPMN%および細菌感染の推移を比較した。PMN%は黒毛和種では3Wから4Wにかけて有意な減少が見られた後に低値を示したのに対し、ホルスタイン種では7W以降で有意な減少が見られた。PMN%で分娩後の各時期において黒毛和種はホルスタイン種と比較して有意に低かった。マイコプラズマは本供試牛群では分離されなかった。一般細菌分離率は黒毛和種が2~3W(50%)から4~6W(20~30%)にかけて減少したのに対し、ホルスタイン種では分娩後9Wまで50~63%で推移した。また、黒毛和種では細菌感染陽性検体は陰性検体と比較してPMN%が有意に高かった。授乳群と早期離乳群の群間においてPMN% は減少傾向を示したものの、授乳群の3Wで有意に高かった。細菌分離率は両群ともに3Wまでは50%程度の高値を示したがその後6Wにかけて授乳群では13.3%に、また早期離乳群では27.3%に減少した。これまでの研究において乳牛ではM. bovigenitalium感染が分娩後の子宮内膜炎に関連していることを明らかにしたが、一方でマイコプラズマが全く分離されない地域、牛群も存在することが明らかとなった。また、黒毛和種牛では乳用牛より子宮修復は早く完了するものの、授乳刺激が子宮内感染・炎症の清浄化に重要な役割を果たすことが子宮内膜細胞診の結果から証明された。
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